グローススタジオレポート

分析コラム・コーポレートクラスタ

コーポレート(管理部門)職の年収とキャリアの地図

経理、人事、法務、総務、経営企画、事務。まとめて「管理部門」「バックオフィス」と呼ばれますが、その中身は営業やマーケティング以上にバラバラです。数字を締める経理、人を採り育てる人事、契約とルールを守る法務、会社の土台を回す総務、事業の道筋を描く経営企画、業務を支える事務。求められる専門性も、年収の伸び方も、まるで別の仕事です。ひとつの階段を登っていくというより、6つの独立した専門が並んでいる、と考えたほうが実態に近い。

本稿では、全国171エリアの公開求人データ(求人ボックスに掲載された求人の月給×12・中央値)を横断し、コーポレート系の主要6職種を「年収の水準」「到達しうる天井」「リモート・地方適性」「キャリアの接続」の4つの軸で俯瞰します。職種ごとに性格が違うので、後半では6職種を1つずつ解説します。自分に合う管理部門はどれか、いまの職種からどこへ動けるかを考える地図として使ってください。

全国171エリア/6職種/集計: 公開求人 月給×12 中央値

1. 入口は横並び。でも天井は、全クラスタで最も大きく開く

まず全国の中央値(月給×12ベース)を高い順に並べます。

法務・コンプライアンス(400万)が頭ひとつ抜け、経営企画(360万)、経理・財務(350万)、人事(336万)、総務(324万)と続き、一般事務・営業事務(300万)まで。6職種は300〜400万の幅に収まっています。

ところが「経験と専門性を積んだ先に到達しうる年収」を見ると、コーポレートは全クラスタの中で最も天井の振れ幅が大きいことがわかります。

  • 経営企画:事業企画・M&A経験を積み、CSO(最高戦略責任者)・事業責任者級で1200〜2000万
  • 人事:採用責任者・組織設計を経て、CHRO(最高人事責任者)・VP HR級で1200〜1800万
  • 法務:契約法務・IPO支援を武器に、法務部門トップのジェネラルカウンセル級で1500万以上
  • 経理・財務:連結決算・IPO準備を経て、CFO(最高財務責任者)・IPO準備責任者級で1000〜1500万
  • 総務:総務マネジメント・人事兼務を経て、総務責任者で700〜900万
  • 一般事務・営業事務:専門事務(法務・経理・人事の事務)へ進み400〜550万、マネジメントで600万超

入口の中央値が最も低い一般事務(300万)から、天井の高い経営企画(2000万)まで、同じ「管理部門」の中に6倍以上の開きがあります。コーポレートは「どの職種を選び、その専門をどこまで極めるか」で年収がまったく変わる領域です。逆に言えば、入口の給与だけを見て管理部門を「地味で上がらない」と判断するのは、大きな見誤りになります。

  1. 1 法務
    400
    1500万以上 (法務部門トップのジェネラルカウンセル)
  2. 2 経営企画
    360
    1200〜2000万 (CSO(最高戦略責任者)・事業責任者)
  3. 3 経理・財務
    350
    1000〜1500万 (CFO(最高財務責任者)・IPO準備責任者)
  4. 4 人事
    336
    1200〜1800万 (CHRO(最高人事責任者)・VP HR)
  5. 5 総務
    324
    700〜900万 (総務責任者)
  6. 6 一般事務
    300
    600万超 (専門事務・バックオフィスマネージャー)

表:全国中央値(月給×12)と、各職種で到達しうる天井の目安。数値をタップで職種別ページへ。

2. 管理部門は、地方から狙いやすい

コーポレート職のもう一つの特徴は、6職種すべてでフルリモート求人の年収中央値が出社中心を上回ることです。成果が決算書・契約書・制度・数値といった形で明確に残り、対面が必須の場面が相対的に少ないため、勤務地に縛られにくい。

  • 法務・コンプライアンス:出社中心 400万 → フルリモート 500万
  • 経営企画:出社中心 360万 → フルリモート 400万
  • 経理・財務:出社中心 350万 → フルリモート 384万
  • 人事:出社中心 336万 → フルリモート 360万
  • 総務:出社中心 324万 → フルリモート 360万
  • 一般事務・営業事務:出社中心 300万 → フルリモート 336万

とりわけ法務は出社400万に対しフルリモートが500万と、100万も上回ります。これは、フルリモートの法務求人が「全国から採用したい、専門性の高いポジション」に偏るためで、地方に住みながら都市部水準の管理部門ポジションを狙えることを意味します。経営企画はUIターン適性も高く、地方在住のまま都市部スタートアップの事業企画を担うキャリアが現実的です。「管理部門は地方だと選択肢が少ない」という前提は、リモートを含めれば必ずしも当てはまりません。

職種 出社中心 フルリモート UIターン

表:出社中心とフルリモートの中央値。「↑」= フルリモートが出社を上回る職種。UIターン列は本サイトの職種別リモート適性評価。

3. 職種別ガイド:6つの管理部門を1つずつ

コーポレートは職種ごとに性格が違うので、それぞれを個別に見ていきます。

経理・財務(中央値350万 / 天井CFO 1000〜1500万)

会社の数字を締める職種。月次・年次の決算、資金繰り、税務が土台で、中堅以上ではIR(投資家向け広報)・FP&A(財務計画・分析)・税務などに細分化します。月次決算に加えて連結決算の経験があると年収+150〜250万。監査法人から事業会社へ、あるいは地方の経理から都市部の上場準備CFOへ、という道が代表的です。数字に強く、コツコツ積み上げるのが得意な人に向きます。

人事(中央値336万 / 天井CHRO 1200〜1800万)

人を採り、育て、組織をつくる職種。採用・労務・HRBP(事業部人事)の3領域があり、地方では1人ですべてを担う体制が多く、都市部SaaSではリクルーター・HRBP・組織開発に細分化されます。採用責任者+組織設計の経験で年収+200〜400万。人材紹介出身から事業会社の採用へ、地方人事から都市部SaaSの人事責任者へ、という転身が目立ちます。人と組織に関心があり、経営に近い立場を目指したい人向けです。

法務・コンプライアンス(中央値400万 / 天井 法務責任者1500万以上)

契約とルールで会社を守る職種。契約レビュー、コンプライアンス対応が中心で、SaaS・フィンテック・グローバル展開企業で専門性の高い求人が伸びています。契約法務+IPO支援の経験で年収+200〜400万、法務部門トップのジェネラルカウンセル級で1500万以上。弁護士事務所から企業法務へ、地方企業法務から都市部SaaSの法務責任者へ、という道があります。6職種で最も中央値が高く、リモート求人の相場も最も高い専門職です。

総務(中央値324万 / 天井 総務責任者700〜900万)

会社の土台を回す職種。ファシリティ管理、庶務、社内イベントなど網羅的で、地方企業ではバックオフィス全般を兼務することが多く、都市部では領域分担が明確です。総務マネジメント+労務・人事の兼務経験で年収+100〜200万。中小企業の総務から上場準備企業の総務へ、というステップが代表的です。幅広く会社を支えるのが得意で、調整役として力を発揮したい人に向きます。

経営企画(中央値360万 / 天井CSO 1200〜2000万)

事業の道筋を描く職種。経営企画・事業企画・新規事業開発を担い、戦略思考が問われます。事業企画+M&Aの経験で年収+200〜400万、CSO・事業責任者級で1200〜2000万と、6職種で最も高い天井を持ちます。コンサルから事業会社の経企へ、地方企業の経企から都市部スタートアップの事業責任者へ、という転身が代表的。UIターン適性も高く、経営の中枢を目指したい人向けです。

一般事務・営業事務(中央値300万 / 天井 専門事務・マネージャー600万超)

業務を支えるオフィスワーク全般。データ入力、受発注、営業サポートなどで、地方求人で大きな需要があり、クラウド化でリモート対応も増えています。専門事務(法務・経理・人事の事務)へ進むと400〜550万、マネジメント+SaaS運用経験で600万超。一般事務から専門事務、さらにバックオフィスマネージャーへ、という道があります。入口として入りやすく、そこから専門性を足して管理部門の他職種へ広げられる起点になります。

4. 年収を上げる共通パターンは「専門性の証明 × 上場・M&A経験 × 責任者化」

6職種は役割が違いますが、天井を上げる条件には共通項があります。

① 専門性の証明。 経理なら連結決算・簿記、人事なら採用・組織設計の実績、法務なら契約法務の専門性、経営企画なら事業企画の実績。「その領域のプロである」ことを実務で示せることが、単価を上げる土台です。

② 上場・IPO・M&Aといった非日常の経験。 経理のIPO準備、人事の急拡大採用、法務のIPO支援、経営企画のM&A。会社の重大局面を経験した管理部門人材は、市場価値が跳ね上がります。とくにスタートアップ・上場準備企業で重宝されます。

③ 責任者・役員への到達。 財務のCFO、人事のCHRO、法務責任者(ジェネラルカウンセル)、戦略のCSO、総務責任者。プレーヤーから「その機能の責任を持つ側」に回ることが、1000万超への分岐点です。管理部門は、専門性を極めた先に経営の一角(CxO=各機能の最高責任者)が見えている領域です。

まとめ:この地図の使い方

  • 地方にいながら管理部門で働きたいなら、コーポレートは6職種すべてでリモート求人が出社を上回る、狙いやすいクラスタです。とくに法務・経理・経営企画はリモートの相場が高い
  • 年収の天井を上げたいなら、まず「専門性の証明」を固め、次に「上場・IPO・M&A」の経験を取りにいき、最終的に各機能の責任者(CFO・CHRO・CSO・法務責任者)を目指す
  • これから管理部門に入るなら、一般事務・営業事務が入りやすい起点。そこから専門事務へ、さらに経理・人事・法務などの専門職へ広げられる

コーポレートは「地味で上がらない」と誤解されがちですが、実際には専門性を極めれば経営の中枢とCxOに直結する領域です。役割の違う6職種の中から、自分の強みが活きる専門を選ぶ。それがこの地図の使い方です。

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この記事に出てくる各職種の全国データ

それぞれの職種について、47都道府県・171エリアの地域別/働き方別(出社・ハイブリッド・フルリモート)の中央値を確認できます。

※ 集計仕様:本稿の数値は公開求人の提示給与中央値(月給×12)です。在職者の実年収(e-Stat 賃金構造基本統計)とは集計仕様が異なります。集計の詳細は運営・集計方針をご覧ください。

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