分析コラム・エンジニアクラスタ
エンジニア職の年収とキャリアの地図
Webエンジニア、アプリエンジニア、SRE・インフラ、データ・AI、QA、社内SE。まとめて「エンジニア」と呼ばれますが、作るものも守るものも職種ごとに違います。サービスを形にするWeb・アプリ、システムを止めないSRE・インフラ、データを価値に変えるデータ・AI、品質を担保するQA(品質保証)、社内のIT環境を支える社内SE。使う技術も、年収の伸び方も、それぞれ別の専門です。
本稿では、全国171エリアの公開求人データ(求人ボックスに掲載された求人の月給×12・中央値)を横断し、エンジニア系の主要6職種を「年収の水準」「到達しうる天井」「リモート・地方適性」「キャリアの接続」の4つの軸で俯瞰します。エンジニアは、全職種の中で最も「地方にいながら都市部の仕事ができる」クラスタです。職種ごとに性格が違うので、後半では6職種を1つずつ解説します。自分に合う専門はどれか、いまの職種からどこへ動けるかを考える地図として使ってください。
なお本稿が扱うのは、ソフトウェア/IT系のエンジニアです。メカ(機械)・エレキ(電気電子)・組込みといったハードウェア/物理系エンジニアは、「製造業・ハードウェアエンジニア」として全国データを公開しています( https://report.lgstudio.jp/occupation/engineer-hardware/ )。これらの領域の相場感やキャリアのご相談は、タレントグローススタジオの無料相談( https://talent.lgstudio.jp/inquiry-career/ )でも承っています。
※ 本稿が扱うのはソフトウェア/IT系のエンジニアです。メカ(機械)・エレキ(電気電子)・組込みといったハードウェア/物理系エンジニアは「製造業・ハードウェアエンジニア」として全国データを公開しています(職種一覧から参照できます)。これらの領域の相場・キャリア相談はタレントグローススタジオの無料相談へ。
全国171エリア/6職種/集計: 公開求人 月給×12 中央値
1. 入口はほぼ横並び。差がつくのは「スキルと専門領域」
まず全国の中央値(月給×12ベース)を高い順に並べます。
アプリエンジニア、SRE・インフラ、データ・AI、QAが横並びの360万、Webエンジニアが350万、社内SE・情シスが336万。6職種は336〜360万の狭い幅に密集していて、全クラスタの中でも入口の差が最も小さい部類です。エンジニアは「どの職種を選ぶか」よりも、「どんなスキルと専門をどこまで深めるか」で年収が決まる世界です。
同じWebエンジニアでも、経験年数や使えるフレームワーク(React・Vue・Next.jsなど)、英語力で年収レンジは大きく変わります。SaaS(クラウド型ソフト)の自社開発でリード経験を積めば年収+150〜200万、英語がビジネスレベルならさらに+150万、というのが相場感です。とりわけデータ・AIエンジニアは、ML(機械学習)やLLM(大規模言語モデル)の応用まで踏み込むと700〜1000万以上に届きます。
つまりコーポレートが「職種選びで天井が変わる」領域だとすれば、エンジニアは「同じ職種の中でもスキル次第で天井が大きく動く」領域です。入口の給与だけを見るのではなく、次にどのスキルを積むかが年収を左右します。
2. エンジニアは、地方から都市部を狙う"最右翼"
エンジニア最大の特徴は、全6職種でフルリモート求人の年収中央値が出社中心を上回り、その差が全クラスタで最も大きいことです。コードもレビューもオンラインで完結し、成果がプロダクトやシステムという形で明確に残るため、勤務地に縛られにくい。
- Webエンジニア:出社中心 350万 → フルリモート 420万
- アプリエンジニア:出社中心 360万 → フルリモート 400万
- SRE・インフラ・セキュリティ:出社中心 360万 → フルリモート 420万
- データ・AIエンジニア:出社中心 360万 → フルリモート 420万
- QAエンジニア:出社中心 360万 → フルリモート 420万
- 社内SE・情シス:出社中心 336万 → フルリモート 360万
Webエンジニアやデータ・AI、SRE、QAは、フルリモートの中央値が出社を60〜70万も上回ります。これは、フルリモート求人が「全国から採用したい、専門性の高いポジション」に偏るためで、地方に住みながら都市部SaaS企業の水準を取りにいけることを意味します。Web・アプリ・データはUIターン適性も高く、地方の受託開発(SI)から都市部SaaSスタートアップのフルリモート職へ、あるいは都市部から地方拠点へと、双方向のキャリアが最も描きやすいクラスタです。「エンジニアは都市部でないと稼げない」という前提は、この分野では完全に過去のものです。
3. 職種別ガイド:6つのエンジニアを1つずつ
エンジニアは職種ごとに扱う技術が違うので、それぞれを個別に見ていきます。
Webエンジニア(中央値350万 / 求人量が最も大きい職種の一つ)
Webサービスを形にする職種。フロントエンド(React・Vueなどの画面側)、バックエンド(Node・Go・Railsなどのサーバ側)、その両方を扱うフルスタックを含みます。SaaSの普及とDX(企業のデジタル化)で、全国的に求人量が最も大きい職種の一つ。自社開発でのリード経験で年収+150〜200万、英語のビジネスレベルでさらに+150万。地方の受託開発から都市部SaaSへ、という道が王道です。求人が多く、未経験からの入口としても現実的な、エンジニアの主力職種です。
アプリエンジニア(中央値360万 / モバイルの専門職)
スマホアプリを作る職種。iOS・Androidのネイティブ開発が中心で、モバイル主体のサービスを展開するスタートアップや大手のDX部門で需要が安定しています。プロダクトのリード経験で年収+150〜200万、Flutter・React Nativeなど1つのコードで両OSに対応するクロスプラットフォーム経験で+50〜100万。受託から自社プロダクト企業へ、地方から都市部スタートアップへ、という移行が代表的です。スマホ体験づくりに関心がある人に向きます。
SRE・インフラ・セキュリティエンジニア(中央値360万 / システムを止めない専門職)
サービスの信頼性と安全を守る職種。SRE(サイト信頼性エンジニア=システムが安定して動き続けるようにする役割)、インフラ(サーバ・ネットワーク)、セキュリティ(脆弱性対応)を含み、規模の小さい会社では兼任が実態です。AWS・GCP・Azureといったクラウドの設計経験、Kubernetes・Terraformの実務、セキュリティ事故対応の経験で年収が大きく分かれます。情シス・インフラ運用からSREへ、あるいはSaaS企業の専門チームへ、という道があります。縁の下で全体を支えるのが得意な人向けです。
データ・AIエンジニア(中央値360万 / 天井が最も高い急成長領域)
データを価値に変える職種。データ基盤(ETL・DWH=データを集めて整える仕組み)の構築から、ML(機械学習)・LLM(大規模言語モデル)の応用まで、幅広く含みます。LLMの普及とデータ活用ニーズの拡大で、全国的に求人が急増中。BI(データ分析基盤)の運用で年収500〜700万、ML・LLMの応用では700〜1000万以上と、6職種で最も高い天井を持ちます。アナリストからの横スライド、地方の受託DXからSaaSのデータ職へ、という転換が一般的。数字とロジックで価値をつくりたい人に向きます。
QAエンジニア(中央値360万 / 品質を担保する専門職)
プロダクトの品質を守る職種。テスト自動化(Selenium・Playwright・Cypressなどのツールでテストを自動化)が中心で、SaaSの品質保証の重要性が高まる中、スタートアップを中心に需要が伸びています。テスト自動化+CI/CD(コードの変更を自動でテスト・反映する仕組み)の経験、QAリードの経験で年収+100〜200万。受託のQAからSaaS自社のQAへ、開発エンジニアからQAリードへ、という転換が代表的です。丁寧さと仕組み化が得意な人に向きます。
社内SE・情シス(中央値336万 / 地方需要が最も強い職種)
社内のIT環境を支える職種。PC・SaaS・ネットワーク・セキュリティを統合的に管理し、地方企業のDX需要が強く、安定した需要があります。ヘルプデスクから情シス企画・SaaS統制へ、さらにセキュリティ責任者(CSIRT=セキュリティ事故に対応する社内チームの責任者)へと進むにつれ年収が上がります。受託開発から事業会社の情シスへ、地方では「社内DX推進」ポジションが増加傾向です。技術と社内の橋渡しが得意な人、地方で腰を据えて働きたい人に向きます。
4. 年収を上げる共通パターンは「専門領域の深さ × リード経験 × 希少スキル」
6職種は扱う技術が違いますが、天井を上げる条件には共通項があります。
① 専門領域の深さ。 Webならフレームワークと設計、SREならクラウドとKubernetes、データならML・LLM、QAならテスト自動化。「この領域なら任せられる」という深さが、単価を上げる土台です。広く浅くより、まず1つ深く。
② リード・設計経験。 個人で書けるだけでなく、チームの技術方針を決め、設計をリードできること。プレーヤーからテックリード・エンジニアリングマネージャーへ回ることが、多くの職種で+150〜200万の分岐点になります。
③ 英語 or 希少スキル。 英語のビジネスレベルでどの職種も+150万前後、そしてLLM応用のような「まだ担い手が少ない希少スキル」は、供給が需要に追いつかず単価が跳ね上がります。次に何を学ぶかを、希少性から逆算するのが効きます。
まとめ:この地図の使い方
- 地方にいながらエンジニアとして稼ぎたいなら、エンジニアは全クラスタで最もリモートに強い領域です。とくにWeb・データ・SRE・QAはフルリモートの相場が出社を60〜70万上回り、地方から都市部SaaSの水準を狙えます
- 年収の天井を上げたいなら、まず「1つの専門領域を深く」、次に「リード・設計経験」、最後に「英語や希少スキル(LLM等)」を積む。この順で市場価値が上がります
- これからエンジニアになるなら、求人量が最も大きいWebエンジニアが現実的な入口。地方なら社内SE・情シスも安定需要があり、そこからSREやデータへ広げられます
エンジニアは、入口の給与がほぼ横並びだからこそ、その先のスキル選びで年収が大きく変わります。地方にいても、都市部と同じ水準の仕事に手が届く。どの専門を深めるかを決めることが、この地図の使い方です。
PR転職・スキルアップの選択肢
本職種・カテゴリ向けの転職・スキルアップサービスの紹介(広告)。
※ 当サイトはアフィリエイトプログラムを利用しています。掲載順は当サイトの判断によります。本コンテンツは編集記事ではなく広告です。
IT 系キャリアの選択肢
副業・フリーランス案件、Web 系のスキル習得サービス。
この記事に出てくる各職種の全国データ
それぞれの職種について、47都道府県・171エリアの地域別/働き方別(出社・ハイブリッド・フルリモート)の中央値を確認できます。
※ 集計仕様:本稿の数値は公開求人の提示給与中央値(月給×12)です。在職者の実年収(e-Stat 賃金構造基本統計)とは集計仕様が異なります。集計の詳細は運営・集計方針をご覧ください。
採用担当・経営者の方へ: 同じデータを「採用市況」の視点で見るなら 採用市況レポート(企業向け) へ。近隣他社・フルリモートを含めた相場感から、自社の採用体制の見直しを検討できます。