グローススタジオレポート

分析コラム・地方採用

地方企業の採用は、都市と何が違うのか

地方で採用をしていると、都市の会社とは違う難しさにぶつかります。「都市より安く採れるはずなのに、欲しい人がいない」「求人を出しても応募が来ない」「フルリモートにすれば全国から採れると聞いたが、本当か」。こうした悩みは、感覚で語られがちですが、公開されている求人データを地域ごとに並べると、かなりの部分が数字で整理できます。

本稿では、全国171エリア・30職種の公開求人データを、東京・主要都市・地方という3つの地域に分けて読み解きます。地方企業の採用担当者が向き合う4つの観点、つまり相場・働き方・母数・要件のそれぞれで、地方と都市に何の違いがあり、さらに同じ「地方」の中でもエリアによって何が変わるのかを見ていきます。

結論を先に言えば、地方企業には「相場が安い」という強みと「専門職の母数が薄い」という弱みが同時にあります。そしてその両方は、地域のどこで、どんな働き方で、どんな要件で募集するかの設計しだいで、大きく動かせます。ひとつずつ、データで確かめていきます。

この記事の見方と、地域の3つの分け方

土台にするのは、全国171エリア・30職種の公開求人から集計した提示給与(月給×12)と、職種ごとの年収帯別スキルです。本稿で「相場」と呼ぶのは、公開求人が提示している給与の中央値です。数値は公開求人の提示額であり、在職者の実年収(賞与込み)とは集計の仕方が異なります。実際に求人票へ書く提示額のほうが採用の判断に近いため、本稿は提示額ベースで揃えています。

地域は、次の3つの層に分けます。

東京

東京都のエリア。相場が最も高くなる層。

主要都市(9都市)

横浜川崎・名古屋・大阪・京都・神戸・札幌・仙台・広島・福岡の中心。東京と地方のあいだ。

地方(157エリア)

上記を除いた全国。地方企業の相場感に最も近い層。

この分け方は、人口や政令指定都市かどうかではなく、実際の給与水準で引いています。たとえば横浜・川崎はWebエンジニアの相場が420万円、データ・AIエンジニアが480万円と大都市の水準で払っている一方、同じ政令指定都市でもさいたまや千葉は同じ職種で360万円・336万円と、地方の水準にとどまります。高い報酬を払う専門職の集積があるのは前者で、後者は給与の実態として地方に近い。だから本稿は、名前ではなく給与で層を分けています。この3層で見ると、地方企業が「自社の相場」と「近隣の主要都市の相場」と「都市の相場」の3つを、同じ物差しで比べられます。

1観点① 相場:地方は安い。ただし職種と地域で差が違う

最初の観点は相場です。地方の相場は、多くの職種で都市より低くなります。これは地方企業にとって、採用コストの面での強みです。ただし「どれだけ安いか」は職種で大きく違い、しかも同じ地方の中でもエリアによって差があります。

専門職ほど、都市との差が大きい

まず、東京と地方の差の幅は、職種によってはっきり違います。専門職や責任者職ほど都市との差が大きく、事務や定型営業は地方でもほとんど下がりません。3層で並べると、その差がひと目でわかります。

職種東京主要都市地方(東京差)

各層の相場(中央値)。Webエンジニアは東京455→地方350で差105万、PdMは差216万。一方で一般事務は地方のほうが高い。主要都市は9都市(横浜川崎・名古屋・大阪・京都・神戸・札幌・仙台・広島・福岡)の中央値。

Webエンジニアは東京455万円に対し地方350万円で差105万円、プロダクトマネージャーは東京636万円に対し地方420万円で差216万円、法務は東京500万円に対し地方400万円で差100万円と、専門職や責任者職ほど都市との差が大きくなります。一方、法人営業は東京360万円・地方336万円で差24万円、一般事務にいたっては東京276万円より地方300万円のほうが高く、事務や定型営業は地方でもほとんど下がりません。この違いは、その職種の高い報酬がどこから生まれているかを映しています。大きな事業やプロダクトを動かす職種は、それを担う企業が都市に集中するため相場が跳ね上がり、地方との差が開きます。事務や営業のように全国どの企業にも必要な職種は、都市に報酬が偏りません。

つまり、地方企業が採用コストで大きく有利になるのは、Webエンジニアやマネジメント職のような、都市で相場が跳ねる職種です。逆に事務や営業では、地方でも都市でも払う額はほとんど変わりません。自社が採ろうとしている職種が、都市との差の大きい職種か小さい職種かを知ることが、相場を読む出発点になります。

東京と地方のあいだにある「主要都市」

地方企業にとって見落とせないのが、東京と地方のあいだにある主要都市の層です。大阪・名古屋・福岡・札幌のような大都市の相場は、東京よりは低く、地方よりは高い、という中間に位置します。

Webエンジニアで見ると、東京455万円・地方350万円に対し、主要都市は400万円で、ちょうど中間です。データ・AIエンジニアも東京500万円・地方360万円に対し、主要都市400万円。個別に見ると、大阪はWebエンジニア450万円・データ・AIエンジニア485万円と東京に迫り、福岡もデータ・AIエンジニア442万円、札幌はプロダクトマネージャー576万円と、専門職の相場が地方よりはっきり高くなっています。

これは、地方企業の採用に選択肢を与えます。地元だけで専門職の候補が見つからない、相場も上げられないという場合、近隣の主要都市まで採用エリアを広げると、地元より高いものの東京よりは低い相場で、専門職の候補に届きやすくなります。逆に、事務や法人営業は主要都市でも東京・地方とほぼ同じ相場なので、これらの職種で立地を広げる意味は小さくなります。主要都市を採用圏に含めるかどうかは、職種によって判断が分かれます。

同じ「地方」でも一様ではない

ここまで「地方」をひとまとめにしてきましたが、同じ地方の中にもエリア差があります。とくに専門職では、その差がはっきり出ます。

データ・AIエンジニアを例にとると、主要都市の福岡は442万円、札幌は400万円と高いのに対し、地方の県庁所在地クラスでは新潟350万円、岡山324万円、金沢360万円と、一段低くなります。つまり同じ「非東京」でも、大都市の中心と、地方の県庁所在地では相場が違います。地方企業が専門職を採るとき、自社が地方のどのあたりに位置するかで、戦う相場が変わってきます。

ただし、地方の中にも例外的に高いエリアがあります。法務は地方の相場が400万円ですが、岡山は444万円と、地方でありながら都市に迫る水準です。地元にたまたまその職種の集積がある場合、地方でも相場が高いことがあります。だから、自社のエリアの相場を全国や近隣と比べて確かめると、打つべき手が見えてきます。自社が近隣より高いエリアにあるなら、その職種は通勤圏や主要都市まで広げても相場は下がりにくいと分かり、逆に低いエリアにあるなら、地元で安く採れる強みを活かす判断ができます。相場を知ること自体が目的ではなく、その位置から自社がどちらに動くかを決めるための土台です。

事務・営業は、どのエリアでもほぼ同じ

一方で、事務や営業のような職種は、地方の中のどのエリアでもほとんど相場が動きません。一般事務は、新潟・静岡・岡山といった県庁所在地クラスでも、それ以外の中小エリアでも、おおむね300万円前後で横並びです。Webエンジニアやデータ・AIエンジニアがエリアで100万円以上動くのとは対照的です。

この違いは、採用の設計にそのまま効きます。事務や営業を採るなら、立地やエリアの選び方で相場を動かす余地は小さいので、要件や働き方の設計に力を割くほうが効果的です。逆に専門職を採るなら、どのエリアで募集するか、近隣の主要都市を含めるか、という立地の判断が相場を大きく左右します。職種ごとに、相場を動かせるレバーが違うということです。

2観点② 働き方:出社なら地元相場、フルリモートなら全国相場

地方企業の採用で最も判断を左右するのが、働き方です。出社を求めるか、フルリモートを認めるかで、払うべき額も、採れる人の範囲も変わります。ここが都市企業と最も違うところで、地方企業ならではの選択肢が生まれます。

専門職の出社は、地方が安い。これは地方企業の強み

まず、出社を前提にした求人の相場は、地方のほうが都市より安くなります。これは観点①で見たとおりで、地方企業が出社前提で地元から採る場合、都市より低い相場で採用できます。

専門性の高い職種ほど、この差は大きくなります。データ・AIエンジニアの地方の出社相場は360万円で、東京の出社相場500万円より140万円低い。Webエンジニアも地方の出社350万円に対し、東京455万円です。地元に候補がいて、出社で働いてもらえるなら、地方企業は都市よりかなり安く専門職を採れます。これは地方企業の明確な強みです。都市の会社が高い出社相場で人材を取り合っているあいだに、地元の候補を地元の相場で採れる、という構図です。

フルリモートは全国相場。全国から採れるが、地元相場では届かない

ところが、フルリモートになると話が変わります。地方でWebエンジニアをフルリモートで募集すると、相場は420万円に上がります。そしてこの420万円は、東京のフルリモート相場420万円とまったく同じです。フルリモートは全国どこの企業も同じ市場で競うため、勤務地が地方でも相場は全国水準になります。

職種地方の出社相場フルリモート(全国相場)

フルリモートは全国どこでも同じ水準。地方の出社相場より高くなる。

データ・AIエンジニアも同じで、地方の出社360万円に対しフルリモートは420万円、これも東京と同額です。この事実は、地方企業に2つの道があることを意味します。ひとつは、出社を前提に地元相場(Webエンジニアなら350万円)で募集し、通える範囲の候補から採る道。もうひとつは、フルリモートを認めて全国相場(420万円)を払い、全国から採る道です。安く採りたいなら出社前提で地元の相場、良い人を全国から採りたいなら全国相場を払う。「フルリモートにすれば全国から採れる」というのは本当ですが、そのときは地元の出社相場では届かない、というのが正確な理解です。地元相場のままフルリモートで募集して応募が来ない、という失敗は、この構造を知らずに起きます。

通勤圏を広げるという、フルリモートの手前の手

全国相場を払うフルリモートに踏み切る前に、もうひとつ手があります。通勤圏を広げることです。フルリモートまでいかなくても、通える範囲を少し広げるだけで、候補の母数と相場は動きます。

地方の中でも、近隣のエリアで相場は違います。拠点の相場が高い、あるいは母数が足りないと感じたら、車や電車で通える近隣エリアまで採用範囲を広げることで、別の相場と候補にアクセスできます。

たとえば金沢を拠点にWebエンジニアを募集する場合、金沢だけでは市場が手薄でも、通勤圏の富山(片道約25分)・小松(約25分)・福井(約50分)まで含めると様相が変わります。金沢周辺のWebエンジニア求人は拠点だけだと限られますが、富山・小松・福井を合わせると求人が出ているエリアの厚みは数倍になります。相場も、金沢の350万円に対し富山348万円・小松336万円・福井336万円と、近隣で十数万円の幅があります。拠点の一点だけで見て「候補がいない」と判断する前に、通える範囲を地図で引き直すと、市場はかなり広がります。

近距離都市への通勤を前提にしたハイブリッドという働き方は、多くの職種で出社中心とフルリモートの中間の相場になります。全面リモートに踏み切る前に、まず通勤圏の引き直しで解決できる場合が少なくありません。これは一部の出社を保ちながら候補を広げる設計で、フルリモートとは別物です。

事務はリモートで相場も候補も増える

働き方の効き方は、職種で正反対になることがあります。事務やコールセンターのような、オンラインで完結する職種では、フルリモートにすると相場が上がり、しかも候補も増えます。

一般事務は、地方の出社相場300万円に対しフルリモートは336万円で、リモートのほうが高くなります。そして募集に出ている求人の数も、フルリモートのほうが厚い傾向があります。オンラインで完結する事務のような職種は、フルリモートで全国から応募が集まりやすく、地方企業でも候補を広げやすい領域です。専門職ではフルリモート=全国相場を払う覚悟が要る一方、事務ではフルリモートがむしろ候補集めの武器になります。同じ「リモートを認める」でも、職種によって損得が逆になることを押さえておくと、働き方の設計を間違えません。

3観点③ 母数:普通の職種は厚い、専門職は薄い

3つめの観点は母数です。地方に候補がどれだけいるかは、職種によって大きく違います。そして、この母数の厚みこそ、地方企業の採用で最も大きな制約になります。

事務・一般的なエンジニアは、地方でも十分にいる

まず、事務や一般的なエンジニアは、地方でも十分な母数があります。専門職ほど、地方では求人そのものが薄くなります。地方1エリアあたりの求人数で並べると、その差がはっきりします。

職種地方1エリアの求人数東京23区

地方1エリアあたりの求人数の中央値。事務やWebは地方でも厚く、PdM・法務は東京の10分の1以下。

一般事務は、地方の1エリアあたりの求人が中央値で1114件と、東京23区の1143件とほぼ同じです。Webエンジニアも地方の1エリアあたり1080件に対し東京23区は3398件で、3倍ほどの差はあるものの、地方にも一定の厚みがあります。経理・財務も地方に888件と、通常の募集で候補が集まる水準です。これらの職種は、地方企業が地元で通常の求人募集をかけても、応募がある程度集まります。相場が安く、母数もあるので、地方企業にとって最も採りやすい領域です。この層では、要件の設計や提示額の調整に力を割けば、地元で完結した採用ができます。

専門・責任者職は、地方に「そもそもいない」

ところが、専門性や責任の重い職種は事情がまったく違います。プロダクトマネージャーは地方の1エリアあたり中央値で153件で、東京23区の2051件のおよそ13分の1。法務も地方359件に対し東京1524件です。こうした職種は、地方では通常の求人募集をかけても、そもそも候補がほとんど出てきません。

「地方だから採れない」と言われる悩みの多くは、実はこの母数の薄さが原因です。相場が安いかどうか以前に、その職種の候補が地元にいない。地方企業がPdMや法務のような専門・責任者職を地元での通常募集だけで採ろうとすると、応募がゼロに近い、という事態が起きます。これは求人票の書き方や提示額の問題ではなく、市場そのものの構造です。

地方の中でも、母数がある大きめのエリア

ただし、同じ地方の中でも、母数の集まり方にはエリア差があります。専門職の求人は、地方の中でも規模の大きいエリアに集中します。プロダクトマネージャーの求人は、地方の中ではさいたまや千葉、那覇のような大きめのエリアに多く、大分県内の中小都市のようなエリアではごく少数です。法務やデータ・AIエンジニアも同じ傾向で、県庁所在地クラスや政令指定都市の周辺に母数が偏ります。

だから、地方企業が専門職を採るときは、自社のエリアだけでなく、通勤圏や近隣の大きめのエリアまで視野に入れると、候補の母数が変わります。前の観点で見た主要都市(大阪・福岡・札幌など)は、相場が高いぶん母数も厚いので、専門職の採用では有力な選択肢になります。地方の中のどこに母数があるかを知ることが、専門職採用の現実的な一歩です。

母数がない職種の、3つの採り方

専門・責任者職のように地元に母数がない職種は、通常募集だけに頼るのは現実的ではありません。ここで効くのが、これまでの観点で見た打ち手です。

① フルリモートで全国から

地元に母数がなくても全国の候補に届く。ただし全国相場(地元より70万円前後高い)を払い続ける選択。

② 通勤圏・近隣主要都市へ

相場は地元水準に近いまま母数を増やせる。通える時間が上限になり、近隣に集積がある職種・エリアで効く。

③ スカウトで直接

相場も立地も自由に選べる。そのぶん採用側の工数と、候補を口説く力に成否が左右される。

この3つは、どれか1つが正解というより、自社の制約で選び分けるものです。提示予算に余裕があり、その職種が完全にリモートで成立するなら、フルリモートで全国相場を払うのが早い。予算を動かせないが、通える範囲に大きめのエリアがあるなら、まず通勤圏を広げる。予算も立地も詰まっているなら、スカウトに工数を割く。つまり「予算」と「地理」の2つの制約のうち、どちらを緩められるかで手が決まります。「地方だから採れない」のではなく、「その職種は地方に母数がないから、自社が緩められる制約に合わせて採り方を変える」というのが実態です。母数の薄い職種ほど、通常募集以外の設計を、この判断から最初に始める必要があります。

4観点④ 要件:欲しい経験の値段は、地方でも全国と同じ

最後の観点は要件です。ここに、地方企業が最もはまりやすい落とし穴があります。相場が安いことと、欲しい経験が安く採れることは、別だからです。

地元相場で即戦力を狙うと、構造的にずれる

地方の相場は都市より安い、と観点①で見ました。ところが、「即戦力の経験」の値段は、地方でも都市でも変わりません。

Webエンジニアの地方相場は350万円ですが、SaaS・自社プロダクトの開発経験やAPI設計の実績が欲しいなら、それが乗るのは全国共通で500万円からです。法人営業も地方相場336万円に対し、SaaSやエンタープライズ営業の経験が欲しければ500万円から。経理は地方相場349万円に対し、連結決算やIPO準備の経験があれば400万円からです。相場は地方水準でも、欲しい経験には全国共通の値段がついています。年収帯別スキルで見ると、これらの即戦力の条件はどれも「中位帯」に現れ、その帯の額は地域を問いません。

つまり、地方の安い相場で募集しながら即戦力を期待するのは、構造的なミスマッチです。地方企業が採用でつまずく典型が、これです。「地元の相場で出しているのに、経験者が応募してこない」という悩みは、多くの場合、欲しい経験の値段(中位帯の額)を出していないことが原因です。まず、自社が欲しい経験がどの帯のものかを確かめ、その額を出せるのか、出せないなら要件を見直すのかを決めることが、要件設計の出発点になります。

「育てて安く」が効く職種、効かない職種

即戦力の値段が出せないなら、育成という選択肢があります。ただし、「安く採って育てる」が効く職種と、構造的に効かない職種があります。

年収帯別スキルの入口の要件を比べると、その差がはっきりします。一般事務は「実務1〜2年、Excel・Word基礎」、コールセンターは「電話・メール対応1〜2年」、インサイドセールスは「営業・カスタマー対応1〜2年」と、入口が軽く、未経験に近い層からでも採って育てられます。地方の安い相場で標準層を採り、社内で育てる道が現実的です。

一方、Webエンジニアは入口でも「Web開発の実務1〜3年」、法務は「法務実務2〜3年」と、最初から実務経験が要ります。エンジニアや専門職は、完全な未経験からの育成が構造的に難しい領域です。これらの職種は、育てるより、即戦力の値段を払って買うか、フルリモートで全国から探すかのほうが現実的です。地方の限られた予算を活かすには、職種ごとに「育てて安く」か「払って即戦力」かを見極めることが要ります。

要件の書き方で、母数を広げる

最後に、要件そのものの書き方にも、母数を広げる余地があります。要件を厚くするほど、応募できる人の範囲は狭まります。ただでさえ母数の薄い地方では、要件の盛りすぎが応募をゼロに近づけます。

年収帯別スキルには、必須と歓迎(あれば尚可)の区別があります。歓迎に置くべき条件を必須にしてしまうと、対象が一段上の帯に移り、ただでさえ薄い地方の候補がさらに狭まります。「英語ができれば尚可」を「英語必須」にした瞬間、対象は大きく減ります。まず絶対に外せない経験だけを必須に残し、それ以外を歓迎に移すことで、地方の限られた候補を取りこぼさずに済みます。また、要件は「経験5年以上」のような年数ではなく、「SaaSを開発した」「連結決算をやった」のような経験の種類で書くほうが、狙った層に届きます。市場が値付けしているのは年数ではなく、何をやったかだからです。母数の薄い地方ほど、要件の設計で候補を広げる工夫が効いてきます。

まとめ:地方企業の採用の勝ち筋

  • 地方企業には「相場が安い(採用コストが低い)」という強みと「専門職の母数が薄い」という弱みが同時にあります。どちらも地域・働き方・要件の設計で動かせます
  • 相場:地方が安くなるのはWebエンジニアやマネジメント職など、都市で相場が跳ねる職種です。事務や営業は地方でも都市でもほぼ同じ。同じ地方の中でも、主要都市(大阪・福岡・札幌)は専門職が高く厚く、県庁所在地クラスとも差があります
  • 働き方:出社前提なら地元相場で安く、通える範囲の候補から。フルリモートなら全国相場を払って全国から。地方企業は、この2択を職種ごとに選べます。事務はリモートで相場も候補も増えます
  • 母数:普通の職種は地方でも厚く、専門職は地方にそもそも母数がありません。専門職はフルリモート・近隣拡大・スカウトで採り方を変えます。母数は地方の中でも大きめのエリアに集中します
  • 要件:欲しい経験の値段は地方でも全国と同じです。地元相場で即戦力を期待せず、育てて安くか、払って即戦力かを職種で見極めます。要件を絞れば薄い母数を取りこぼしません

地方企業の採用は、都市に比べて一方的に不利なわけでも有利なわけでもありません。安く採れる職種と、母数がなく採りにくい職種が、都市よりはっきり分かれるだけです。その分かれ目を、相場・働き方・母数・要件のデータで、しかも自社が地方のどこに位置するかまで含めて見極めれば、限られた予算でも勝てる採用を設計できます。まず、自社の職種とエリアが、この4つの観点でどこに当たるかを確かめるところから始まります。

この記事で使ったデータ

この記事で扱った職種の採用相場・競合・働き方の選択肢を職種ごとに確認できます。年収帯別スキル、地域別・働き方別の相場、近隣エリアの相場と求人数は、47都道府県・171エリアで確認できます。

※ 集計仕様:本稿の「相場」は公開求人の提示給与中央値(月給×12)です。在職者の実年収(e-Stat 賃金構造基本統計、賞与込み)とは集計仕様が異なります。集計の詳細は運営・集計方針をご覧ください。

働く方へ: 同じデータを「働く側」の視点で見るなら求職者向けの分析コラムへ。地方⇄都市の年収差と、その差の埋め方(リモート・通勤・スキル)を職種ごとに読めます。

経営者・事業責任者の方へ: 採用の前に事業をどう伸ばすかは地方企業の成長事例へ。承継・D2C・地域連携など、公開取材ベースの打ち手を読めます。

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