グローススタジオレポート

分析コラム・営業クラスタ

営業職の年収とキャリアの地図

「営業」とひとくくりにされがちですが、その中身はかなり多様です。新規の商談を切り拓く法人営業、電話やオンラインで見込み客を育てるインサイドセールス、パートナー企業を動かす代理店営業、資産や保険を扱う金融営業。それぞれ求められるスキルも、年収の伸び方も、働き方の自由度も大きく違います。

本稿では、全国171エリアの公開求人データ(求人ボックスに掲載された求人の月給×12・中央値)を横断し、営業系の主要8職種を「年収の水準」「到達しうる天井」「リモート・地方適性」「キャリアの接続」の4つの軸で俯瞰します。転職や職種選びで「どの営業を選ぶべきか」「今の営業から次にどこへ動けるか」を考えるときの、一枚の地図として使ってください。

全国171エリア/8職種/集計: 公開求人 月給×12 中央値

1. 入口の年収は横並び。差がつくのは"天井"の高さ

まず全国の中央値(月給×12ベース)を高い順に並べます。

金融営業・ファイナンシャルプランナー(384万)が頭ひとつ抜け、続いて営業責任者・セールスマネージャー(370万)、代理店・パートナーセールス(360万)、ルート営業・カスタマーサクセス(350万)。そして法人営業(BtoB)・インサイドセールス・個人営業(BtoC)がいずれも336万で並び、最も低いのがコールセンター・BPO(300万)です。

一見すると、300〜384万の狭い幅に密集しています。ところが、それぞれの職種が「経験と専門性を積んだ先に到達しうる年収」を見ると、景色が一変します。

  • 営業責任者は、営業組織を率いるVP of Sales級で1200万以上
  • 代理店営業は、チャネル戦略の責任者で1000〜1500万
  • 金融営業は、外資系金融やプライベートバンクで1000万超
  • 法人営業とカスタマーサクセスは、エンタープライズ/Head of CSで800〜1200万
  • 個人営業も、不動産や保険の高単価層では1000万超

つまり入口の給与はほぼ横並びでも、天井には2〜4倍の開きがあります。営業という仕事は「最初にいくらもらえるか」よりも、「どの専門性を選んで天井を引き上げるか」で生涯年収が決まる職種群だと言えます。逆に言えば、スタート地点の中央値の低さを理由に営業を諦めるのは早計で、どの山(専門性)に登るかの選択こそが重要になります。

  1. 1 金融営業
    384
    1000万超 (外資系金融・プライベートバンク)
  2. 2 営業責任者
    370
    1200万以上 (VP of Sales 級)
  3. 3 代理店営業
    360
    1000〜1500万 (チャネル戦略の責任者)
  4. 4 ルート/CS
    350
    800〜1200万 (エンタープライズ/Head of CS)
  5. 5 法人営業(BtoB)
    336
    800〜1200万 (エンタープライズ営業)
  6. 6 インサイドセールス
    336
    700〜900万 (SDR/BDR(新規開拓の内勤営業)→ マネジメント)
  7. 7 個人営業(BtoC)
    336
    1000万超 (不動産・保険のハイクラス層)
  8. 8 コールセンター
    300
    600〜800万 (SV(スーパーバイザー)・マネージャー)

表:全国中央値(月給×12)と、各職種で到達しうる天井の目安。数値をタップで職種別ページへ。

2. 地方から狙える営業、リモート求人の中央値が"出社を上回る"

営業職のもう一つの特徴は、勤務地に縛られにくいことです。データを見ると、フルリモート求人の年収中央値が、出社中心の求人を上回る職種が目立ちます。

  • ルート営業・カスタマーサクセス:出社中心 350万 → フルリモート 420万
  • 代理店・パートナーセールス:360万 → 400万
  • 法人営業(BtoB)・インサイドセールス・個人営業:336万 → 360万

これは、フルリモート求人が「全国から採用したい、専門性の高いポジション」に偏るためで、地方に住みながら都市部水準の相場を取りにいけることを意味します。「地方に戻ると年収が下がる」という不安は、営業職に関しては必ずしも当てはまりません。

とりわけインサイドセールスは、電話・メール・オンライン会議が主戦場でUIターン適性が極めて高く、フルリモート化が最も進んでいます。営業未経験からの入口としても入りやすく、地方在住のまま都市部のSaaS企業に転職する、といったキャリアが現実的です。法人営業やカスタマーサクセスも適性が高く、リモート前提で全国の求人を狙えます。

職種 出社中心 フルリモート UIターン

表:出社中心とフルリモートの中央値。「↑」= フルリモートが出社を上回る職種。UIターン列は本サイトの職種別リモート適性評価。

3. 年収を上げる分岐点は、職種を越えて共通している

8職種それぞれで「500万〜800万の壁を越える条件」を並べると、キーワードが繰り返し現れます。攻略法は、実は3枚のカードに集約できます。

① SaaS/IT文脈の経験。 法人営業ならエンタープライズ営業、インサイドセールスならSDR/BDR、カスタマーサクセスならオンボーディング・活用支援。SaaS業界の営業経験は、どの営業職でも年収を一段引き上げる共通通貨です。

② マネジメント経験。 営業責任者は20名規模の組織統括、カスタマーサクセス・インサイドセールス・コールセンターはSVやManager経験。「数字と人を持つ」ことが、プレーヤーから管理職への年収ジャンプを生みます。

③ 専門資格・高単価商材。 金融営業はCFP(上級ファイナンシャルプランナー資格)や1級FP・証券外務員、個人営業は不動産・保険といった高単価商材の販売実績。専門性の証明が、そのまま単価に反映されます。

裏を返せば、「SaaS経験」「マネジメント」「専門資格」のどれか1枚を意識的に取りにいくだけで、いまの営業職の年収帯を一段上げられる、ということです。漠然と「頑張る」のではなく、この3枚のどれを次に取るかを決めるのが、最短ルートになります。

4. キャリアの地図:営業8職種は3層でつながっている

営業の各職種は独立して存在するのではなく、入口 → 専門化 → 統括という3層でゆるやかにつながっています。

入口の層は、インサイドセールス・個人営業・コールセンター。未経験や第二新卒でも入りやすく、営業の基礎(商談・接客・オンライン対応)を身につける段階です。

専門化の層は、法人営業(BtoB)・ルート営業/カスタマーサクセス・代理店営業・金融営業。SaaSや特定業界、資格によって単価を上げ、扱う金額と責任を大きくしていく段階です。

統括の層は、営業責任者・セールスマネージャー。個人の数字から、チーム・組織の数字を持つ段階です。

実際によくある動き方としては、インサイドセールス → 法人営業やカスタマーサクセス → 営業責任者、個人営業 → エリアマネージャー → 役員、そして地方のルート営業 → 都市部の高単価営業(フルリモート)への転換などが代表的です。ポイントは、最初にどの入口を選んでも、その先の乗り換えで年収帯は動かせること。今いる場所は、地図上の通過点にすぎません。

まとめ:この地図の使い方(あなたはどう選ぶか)

  • とにかく早く年収を上げたいなら、天井の高い金融営業・法人営業・代理店営業へ。ただし相応の専門性(SaaS・資格・大型案件)が要ります
  • 未経験から、あるいは地方から始めたいなら、まずインサイドセールス(リモート適性が最も高く、入口として最適)。そこから法人営業やカスタマーサクセスへ乗り換えて単価を上げる
  • 今の営業のまま伸ばしたいなら、「SaaS経験・マネジメント・専門資格」の3枚のうち、次の1枚を決めて取りにいく

営業は、入口の給与で判断すると本質を見誤ります。天井の高さ・リモートの自由度・キャリアの接続まで含めて見れば、地方にいても、未経験でも、年収を伸ばす道筋は必ず引けます。

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この記事に出てくる各職種の全国データ

それぞれの職種について、47都道府県・171エリアの地域別/働き方別(出社・ハイブリッド・フルリモート)の中央値を確認できます。

※ 集計仕様:本稿の数値は公開求人の提示給与中央値(月給×12)です。在職者の実年収(e-Stat 賃金構造基本統計)とは集計仕様が異なります。集計の詳細は運営・集計方針をご覧ください。

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