グローススタジオレポート

地方企業の成長事例

「1粒1000円ライチ」が作った人口1万7千人の町の地域商社モデル

人口1万7千人弱の宮崎県新富町で発足した地域商社が、「1粒1000円ライチ」のブランディングと起業家コミュニティ育成で「町を全国に届ける」モデルを示した、自治体×財団型の地方創生事例

企業概要(公開情報)

企業名
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)
所在地
宮崎県児湯郡新富町
代表者
岡本啓二(代表理事 ※2025年6月就任、前任は齋藤潤一)
設立
2017年
業種
地域商社/地方創生/起業家育成
従業員数
非公開(設立期は出向職員+業務委託の混成体制と複数取材で報じられている)
本記事の公開情報
2026-05-18 公開 / 出典 16本 / 本文約5,500字

今回取り上げるのは、宮崎県児湯郡新富町に拠点を置く一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(通称「こゆ財団」)です。2017年4月、新富町が旧新富町観光協会を法人化する形で設立した地域商社で、設立から8年でふるさと納税の累計寄附額100億円超を運営し(こゆ財団公式「ふるさと納税」ページほか)、1粒1000円の「新富ライチ」を全国ブランドに育てた取り組みが、Forbes JAPAN、日経BP「新・公民連携最前線」、PR TIMES、LOCAL LETTER、グリーンズ、宮崎日日新聞などで継続的に取り上げられてきました。新富町の人口は2025年4月時点で約1万6,400人(新富町公式「人口」、citypopulation.de)。1万7千人弱の小さな町が「自立して稼ぐ地域商社」モデルを掲げて全国の視察先になった、自治体×財団型の地方創生事例です。

本稿は、次の公開取材記事と公式発表をもとに、以下3点を整理します。

  • こゆ財団公式サイト「about/about us」「事業概要」「ふるさと納税」「ローカルベンチャースクール」「こゆ朝市」「役員紹介」
  • PR TIMESに掲載された同財団プレスリリース複数本
  • Forbes JAPAN関連報道
  • 日経BP「新
  • 公民連携最前線(PPPまちづくり)」
  • LOCAL LETTER「公務員がビジネスで成功した理由(岡本啓二)」「齋藤潤一氏が新富町に注力するワケ」
  • グリーンズ「こゆ財団の観光
  • 人材育成事業担当」
  • SENQ「財団法人のイメージが変わる!こゆ財団の新たな働き方」
  • sotokoto online「新富ライチがグッドデザイン賞」
  • ふるさとチョイス「読むふるさと」「1粒1000円ライチを生んだ地域商社」
  • PR TIMES「3年で95倍」関連報道
  • ジャフコ「シリコンバレーから宮崎県に来た逆輸入起業家」
  • ブランド
  • マネージャー認定協会「ブランディング事例『新富ライチ』」
  • AGRIST公式
  • NewsPicks「ふるさと納税を3年で95倍集めた小さな町の大戦略」
  • 内閣府「世界一チャレンジしやすいまち」資料
  1. 設立の前夜──新富町役場の係長が「外に法人を作る」という選択をした経緯
  2. 何で稼いだか──「1粒1000円ライチ」とふるさと納税運営という二枚看板
  3. 何を育てたか──ローカルベンチャースクール、新富アグリバレー、そして「こゆ財団2.0」

1. 設立の前夜──「役場の外に法人を作る」という選択

新富町は宮崎県の中央部、宮崎市と西都市の間に位置する人口1万7千人弱の町です。基幹産業は施設園芸を中心とした農業で、ピーマン、ライチ、マンゴー、お茶などの産地として知られています(新富町公式「町の概要」、citypopulation.de、Wikipedia)。一方で、人口減少と高齢化、商店街の空き店舗化という、全国の地方自治体に共通する課題を抱えていました。

こゆ財団の設立の中心人物は、新富町役場の職員だった岡本啓二氏(現代表理事、設立時は執行理事)です。LOCAL LETTER「全国から注目が集まる地域商社『こゆ財団』の発起人、岡本啓二が語る『公務員がビジネスで成功した理由』」(2018年公開)、machi-log「飛び出した公務員、世界的な経済誌フォーブズ誌に載る」、こゆ財団note「はじめまして、こゆ財団です!」、SENQ「財団法人のイメージが変わる!こゆ財団の新たな働き方と多くの人を巻き込む力とは(前編)」などの取材によれば、岡本氏は1999年に南九州大学を卒業して新富町役場に入庁し、徴税、福祉、防災、農業振興などを担当してきた地元出身の職員です。2016年にふるさと納税担当として返礼品の刷新と寄附額拡大を経験したことが、後の地域商社構想の土台になりました。

岡本氏が一貫して語っているのは、「役場の中だけで頑張っても、地域経済は回らない」という前提認識です。LOCAL LETTERの取材では次のように述べています。

以前から役場だけで頑張っても難しいと感じていた。地域には一過性の単発的な取り組みはあっても、それを継続するプレイヤーがおらず、勢いがありませんでした。役場の外に法人をつくり、そこでちゃんとお金を稼いで、ノウハウを周りに普及することで、地域経済が回せる仕組みを確立できたらいい ── LOCAL LETTER「公務員がビジネスで成功した理由」(岡本啓二、2018年)

設立の議会承認は、最後まで難航しました。「公務員しかやったことがなく、新富町から出たこともない役場職員にできるのか」という議員からの懸念に対して、岡本氏は地域プロデューサーの齋藤潤一氏(当時、宮崎にUターン直後)に代表理事就任を打診し、議会を通したと前掲LOCAL LETTERは伝えています。

2017年4月、旧新富町観光協会を法人化する形で、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団)が発足しました。代表理事は齋藤潤一氏、執行理事は岡本啓二氏(役場から出向)、事務局長は2017年6月から地元宮崎出身の編集者・高橋邦男氏が務めるという、官民混成の体制でスタートします(こゆ財団公式「役員紹介」「インタビュー(執行理事×事務局長)」、高橋邦男note、SENQ取材)。

地方自治体が「外郭団体としての観光協会」を「自立して稼ぐ財団」に組み替えるという発想は、当時としては全国でも珍しい意思決定でした。新富町の場合、もう1つ重要だったのは、「役場の係長級のキーマン1人と、外から呼び込んだプロデューサー1人」という人選です。能作(富山)や中川政七商店(奈良)が、家業の中の後継者主導で業態を変えていったのに対し、こゆ財団は「行政側の起案者+民間プロデューサー」という構造で始まりました。地方創生の事例として参照されやすいのは、この構造が他の自治体でも再現しやすいからです。


2. 「1粒1000円ライチ」──小さな町の高単価ブランディング

こゆ財団を全国に知らしめた最大の打ち手が、「新富ライチ」のブランディングです。

国産生ライチは流通量全体の約1%しかなく、ほぼ冷凍輸入品で占められているという市場前提があります(こゆ財団note、九州アイランド、ふるさとチョイス「読むふるさと」記事、PR TIMES複数本)。新富町ではライチ農家・森哲也氏が、父・森泰男氏が2005年頃から栽培していたライチを継ぎ、マンゴー栽培技術を応用しながら2014年からハウス栽培を本格化させていました。新富ライチ公式サイトとブランド・マネージャー認定協会「ブランディング事例『新富ライチ』」、地域活性化プロジェクト取材によれば、森氏は「自信を持ってお客様に出せるまで10年かかった」と語り、栽培技術を磨き上げた一方で、市場認知と販路開拓に苦戦していました。

2017年、こゆ財団は森氏との協働で、ライチを「希少な国産生ライチ・新富ライチ」として再定義します。ブランド・マネージャー認定協会の事例レポートによれば、ブランディングにあたっては「糖度15度以上、サイズ50g以上」を満たすものを上位等級「新富ライチpremium50」として1粒1,000円で販売するという、産地として前例のない品質規定を導入しました。冷凍輸入が大半を占める市場で、生・国産・高糖度・大粒というスペックを言語化し、流通量1%という希少性をブランド価値に変えた、というのが各取材に共通する整理です。

産地間競争ではなく、新富町ならではの永く愛されるブランドでありたい ── 新富ライチ生産者・森哲也氏(sotokoto online、PR TIMES、新富ライチ公式サイト)

新富ライチは2020年度グッドデザイン賞を受賞しました(PR TIMES 2020年9月、sotokoto online 2020年公開、グッドデザイン賞公式)。第三者評価としてのデザイン賞受賞は、地方一次産品にとって、首都圏の小売・百貨店・贈答市場で取扱を増やす決め手の1つとして機能します。

このブランディングが新富町経済にもたらしたインパクトは、ふるさと納税の数字に直接表れました。NewsPicks「ふるさと納税を3年で95倍集めた小さな町の大戦略」(2022年)、こゆ財団公式「ふるさと納税」ページ、PR TIMES複数本によれば、新富町のふるさと納税寄附額は次のように推移しています。

  • 平成27年度(2015年度): 約2,000万円
  • 平成28年度(2016年度): 約4億円
  • 平成29年度(2017年度、こゆ財団設立年): 約9.3億円
  • 平成30年度(2018年度): 約19億円

3年で約95倍という伸びは、新富ライチ単独の効果ではなく、こゆ財団が返礼品ラインナップ全体を「ブランド化された一次産品の集合体」に組み替えたことで生まれた成果です。こゆ財団公式は、ふるさと納税運営の累計寄附額が、設立から8年で100億円を超えたと発表しています(こゆ財団公式・PR TIMES 2025年)。

注目したいのは、「1粒1000円」という価格設定そのものが、町外の人にとって「事件性のあるニュース」として機能した点です。Forbes JAPAN、日経BP、地域メディア各誌の取材で「1粒1000円ライチ」というフレーズが繰り返し見出しに使われたことは、新富町という固有名と、ライチという特産品を、首都圏読者の語彙に押し込むうえで決定的でした。地方の一次産品が、価格そのものをブランド資産にした例として、こゆ財団の打ち手は地方経営にとって極めて再現性の高い参考になります。


3. 「世界一チャレンジしやすいまち」──ローカルベンチャースクールという二本目の柱

こゆ財団の事業構造でもう1つ重要なのが、「特産品販売で稼ぎ、稼いだ資金を起業家育成に再投資する」という設計です。こゆ財団公式「事業概要」「about us」、内閣府「世界一チャレンジしやすいまち」資料、Forbes JAPAN取材、LOCAL LETTER「齋藤潤一氏が新富町に注力するワケ」などに共通して登場するのが、「世界一チャレンジしやすいまち」というビジョンです。

このビジョンを具体化したのが、ローカルベンチャースクール(LVS)と、その派生プログラム「ローカルベンチャーラボ」です(こゆ財団公式「移住促進ー地域版MBA『ローカルベンチャースクール』」「地域おこし協力隊ーローカルベンチャーラボ」、PR TIMES 2018年7月「地方創生に特化した人材育成スクール開校」、あつまのおと過去掲載)。

ローカルベンチャースクールは、東京会場と新富町でのフィールドワークを組み合わせた「地域版MBA」型の起業家育成プログラムとして始まりました。第1期(2018-2019年度)は20名前後が参加し、卒業生のうち複数名が新富町への移住・起業を選択したとPR TIMESおよびこゆ財団公式が伝えています。新富町で起業する卒業生には、地域おこし協力隊制度などを活用した活動支援金が提供される設計です。

派生プログラムの「ローカルベンチャーラボ」は、地域おこし協力隊制度を「地域に根ざした起業準備期間」として再設計したものです。こゆ財団公式「地域おこし協力隊」ページ、九州経済産業局「社会起業家を目指す 地域おこし協力隊へのサポート」資料によれば、3年間の隊員任期中に事業の実証実験を進め、卒業後に新富町で独立する形を制度的にバックアップしています。

このローカルベンチャー型の起業家育成モデルは、こゆ財団単独のものではありません。NPO法人ETIC.が事務局を務める「ローカルベンチャー協議会」(2016年発足、岡山県西粟倉村などが幹事)が全国のローカルベンチャー支援を束ねており、こゆ財団もその文脈の中で頻繁に紹介されてきました(ETIC.公式、ETIC.「ローカルベンチャー推進事業白書2024」)。新富町の特徴は、自治体が観光協会を財団化して地域商社の「中の人」になり、そこを起業家の受け皿として機能させた点にあります。

1粒1,000円でブランド化したライチに代表される特産品の販売を通じて、稼いだお金を起業家育成に投資をしている ── こゆ財団公式「事業概要」(複数取材で同趣旨の説明)

この「稼いで再投資する」サイクルは、ふるさと納税運営の収益構造と組み合わさることで強度を持ちます。ふるさと納税の運営手数料・関係人口創出・返礼品提供事業者の販路開拓を、こゆ財団がワンストップで担う構造になっているため、ライチ農家の収益増、町の税収増、財団の運営原資、起業家への再投資という流れが、1つの財団の中でつながります。地方の自治体や農協が「単発の補助金プロジェクト」を繰り返して終わるのに対し、こゆ財団は同じ町内で「収益→再投資→新規事業→収益」という循環を意図的に設計しました。


4. ふるさと納税×地域商品の連動運営──「数字で語れる地域商社」

こゆ財団の運営でもう1つ重要なのが、ふるさと納税の運営とブランディング事業を、組織として一体で動かしている点です。

新富町のふるさと納税は、2016年度時点で約4億円(担当課時代の岡本啓二氏が立ち上げた)から、こゆ財団設立後の2017年度に約9.3億円、2018年度には約19億円へと急伸しました(NewsPicks「3年で95倍」、こゆ財団公式、PR TIMES複数本)。新富町ふるさと納税特設サイトとふるさとチョイス、ANAのふるさと納税ページを見ても、新富ライチ、ピーマン、マンゴー、お茶、肉・米といった一次産品が、「新富ライチpremium50」「新富ライチ40g×10玉」のように、グレード分けされた商品ラインとして整理されています(furusato-tax.jp、furusato.ana.co.jp、furusato-shintomi.jp)。

寄附者のニーズや市場の動向をキャッチしながら、ビジネスの仕組みを取り入れて運営する ── こゆ財団「ふるさと納税」ページ要旨(公式コピーから整理)

この姿勢が、いわゆる「お礼の品競争」とは別の戦い方を可能にしています。返礼品の単価を上げるのではなく、「価値の説明を上げる」(=ブランディング・グッドデザイン賞・ストーリー発信)ことで寄附単価を引き上げる、というのが、新富ライチを軸にしたこゆ財団の方法論です。返礼品の還元率規制が議論される中で、自治体が取れる持続的な打ち手としても参考になる作法です。

加えて、こゆ財団は2019年8月、空き店舗をリノベーションした農業特化型コワーキング「新富アグリバレー」を開所しました(こゆ財団公式「新富アグリバレー」、SMART AGRI 2019年8月「新富町こゆ財団が『新富アグリバレー』始動」、新富アグリバレー公式)。クラウドファンディングで原資を集め、農業スタートアップが入居できる集積地として整備されたこの拠点は、新富町を「食と農のシリコンバレー」と位置づける構想の中核です。実際、ここを母体に2019年10月、齋藤潤一氏が農業ロボットを開発するAGRIST株式会社を創業しました(AGRIST公式「会社概要」「経営理念」、ジャフコ「シリコンバレーから宮崎県に来た逆輸入起業家」、HERO X、ハチドリ電力)。

人口17,000人の町から農業ロボットで世界の農業課題を解決 ── ジャフコ「シリコンバレーから宮崎県に来た逆輸入起業家」(2021年3月公開)

AGRISTは「第10回ロボット大賞 農林水産大臣賞」(2022年)や「CES 2023 Innovation Awards」を受賞しており、こゆ財団の起業家育成プログラムが、地域内のスタートアップ創出と海外評価の獲得まで地続きでつながっていることを示しています(AGRIST公式)。


5. 編集視点:小さな町の地域商社モデルから取り出せるもの

こゆ財団の事例から取り出せる学びを、ローカルグローススタジオ的に整理すると次のようになります。

  1. 観光協会を「外郭団体」から「地域商社」に組み替える 新富町の打ち手は、新しい組織をゼロから作ったのではなく、既存の観光協会を法人化して地域商社に組み替えたことが核です。地方自治体にとって、財源も人員もすでに動いている既存組織を再設計する作業は、ゼロイチで法人を新設するよりはるかに現実的です。こゆ財団の構造は、全国の自治体が「外郭団体改革」を地方創生の打ち手として再解釈するための、扱いやすい参考事例になっています。

  2. 「1粒1000円」を価格ではなくニュースとして使う 新富ライチの「1粒1000円」というスペックは、贈答市場での販売価格である以前に、町外の編集者・読者・消費者の語彙に町の名前を押し込むためのフックでした。地方の一次産品にとって、価格設定そのものを話題化の起点にできるのは、ストーリーが供給制約(国産生ライチ流通量1%、糖度15度以上、50g以上)で裏打ちされているときだけです。「希少性×品質規定×価格」の三点セットを言語化することは、地方ブランドの基本作法として再現性があります。

  3. ふるさと納税運営とブランディング事業を同じ法人で回す 多くの自治体は、ふるさと納税運営を民間運営代行に外注し、ブランディングは別予算で発注する形を取ります。こゆ財団は、その両方を同じ財団の中に置き、返礼品開発・販売・関係人口創出・起業家受け入れまでをワンストップで動かしました。寄附額を伸ばすときに、返礼品単価ではなくブランド価値を上げる、という選択を内側から取れるのは、この組織設計があるからです。

  4. 「世界一チャレンジしやすいまち」をビジョンとして声に出す 新富町のような人口1万7千人弱の町が、「世界一」を冠したビジョンを掲げるのは、それ自体が外部からの注目を呼び込むためのデザインでもあります。地方創生で多くの自治体が「住みやすい○○」「自然豊かな○○」というカテゴリ表現に留まる中で、こゆ財団は「チャレンジする人にとってどう便利か」という1点に絞ってビジョンを言語化しました。地方の小規模自治体が首都圏の人材を呼ぶときの、有効なフレーズの作り方として参照できます。

  5. 代表理事を交代しても続く仕組みに、設立期から設計する 2025年6月、こゆ財団は設立期からの代表理事だった齋藤潤一氏から、執行理事を務めてきた岡本啓二氏への代表理事交代を発表しました(PR TIMES 2025年「岡本啓二が代表理事に就任」)。設立期から「町外から呼んだプロデューサー(齋藤氏)+町役場のキーマン(岡本氏)」の二人三脚で動いていたため、代表理事交代後も事業継続性が確保されました。地域商社モデルの永続性を考えるうえで、「外部人材と内部人材を最初から並走させる」設計は、地方の事業承継論にとっても再現可能なパターンです。


本事例から見える経営とマーケティングの学び

こゆ財団の物語は、「観光協会を地域商社にした自治体の意思決定」「1粒1000円という価格設計でローカル産品を全国ニュースに変えた打ち手」「起業家育成への再投資で町内のスタートアップ生態系を作った試み」という、地方創生の主要論点を、人口1万7千人弱の町の中でまとめて引き受けた事例として読めます。重要なのは、これらが個別の補助金プロジェクトの寄せ集めではなく、「自立して稼ぎ、稼いだ資金を町に再投資する」という一貫した経営思想で連結されている点です。地方企業や地方自治体が、ブランドやリソースが薄い状態から成長を作るときに、こゆ財団の歩みは「小さい町だからこそ取れる、希少性を価格に変換する戦い方」と「外部人材と内部人材を最初から並走させる組織設計」という、2つの再現性ある作法を残しました。


関連:ローカルグローススタジオ・グロースマガジン

本事例の学びと共通する、グロースマガジン(https://lgstudio.jp/magazine/)の解説記事を2本紹介します。

1. 地方企業/スタートアップに共通する、低リソース・ブランド無しの戦わない戦略

共通点: こゆ財団が新富ライチで取った「国産生ライチは流通量1%」「糖度15度以上・50g以上のものだけを1粒1000円」というスペック規定は、本記事の「戦わない戦略」のフレームの実装例として読めます。冷凍輸入ライチ全体と価格や量で正面から戦うのではなく、市場の中で誰も占有していない「希少な国産生ライチ・最高等級」という1ポジションに資源を集中させた構造です。人口1万7千人弱の町が首都圏の贈答市場に名前を残せたのは、まさに「戦う場所を選び直した」結果として整理できます。

2. 地方企業と、スタートアップの類似点と相違点

共通点: こゆ財団がローカルベンチャースクールやローカルベンチャーラボ、新富アグリバレーを通じてAGRISTのような農業スタートアップを地域から生み出した動き方は、本記事が整理する「地方企業とスタートアップの類似点と相違点」の応用編として読めます。地方の自治体・財団が、外部から呼んだプロデューサーと地元キーマンの二人三脚でスタートアップ生態系を作っていく作法は、地方経営者・地方人材がスタートアップ的な急成長モデルを取り込む際の参考になります。


出典


※本稿は2026年5月18日時点の公開取材記事と公式発表を基に構成しています。固有名詞・数値は引用元の表記に従いました。記載に誤りがあった場合は、お問い合わせフォームよりご指摘ください。

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第8回 地方企業とスタートアップの共通点・類似点

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