グローススタジオレポート

地方企業の成長事例

横浜国大生がルワンダで起業し、衛星×AIで農地を可視化して地方拠点からインド・東南アジア・アフリカへ展開した新規創業の成長事例

地方拠点に本社を置く新規創業のディープテックスタートアップが、衛星データ×AIで農地を可視化し、地方発でインド・東南アジア・アフリカへ展開する新規創業の地方企業の成長事例

企業概要(公開情報)

企業名
サグリ株式会社
所在地
兵庫県丹波市氷上町
代表者
坪井俊輔(代表取締役CEO)
設立
2018年
業種
衛星データ × AI × 農業 SaaS (アグリテック)
従業員数
約30名規模(2024年シリーズA時点、グローバル含む)
本記事の公開情報
2026-05-18 公開 / 出典 17本 / 本文約5,500字

今回取り上げるのは、兵庫県丹波市氷上町に本社を置くアグリテック・スタートアップ、サグリ株式会社です。横浜国立大学理工学部在学中に教育事業の株式会社うちゅうを立ち上げ、ルワンダでの教育支援活動を経て2018年6月に農業領域で新規創業した坪井俊輔氏が代表を務めるディープテック企業で、衛星データ(Satellite)×機械学習(AI)×区画技術(GRID)を掛け合わせた「アクタバ」「デタバ」などの自治体向け農地管理アプリと、東南アジア・南アジア・アフリカでのカーボンクレジット事業を展開しています。

本稿は、次の公開取材記事と公式発表をもとに、以下3点を整理します。

  • 日本経済新聞
  • 日経クロステック
  • ジェトロ
  • 宙畑(sorabatake)
  • SPACE Media
  • BRIDGE
  • SMART AGRI
  • AGRI JOURNAL
  • TOMORUBA
  • リクルート「ガラージュトーク」
  • xTECH(三菱地所)
  • 内閣府宇宙政策
  • 経済産業省J-Startup
  • 横浜国立大学
  • サグリ公式発表
  1. 創業の前夜──横浜国大生がルワンダで気づいた「夢を語れない子どもたち」
  2. 何をつくったか──衛星×AIで農地を可視化する「アクタバ」「デタバ」の自治体導入
  3. どこへ向かうか──インド・カンボジア・アフリカと、地方拠点で世界の農業課題に挑む構図

1. 創業の前夜──大学3年生で起業した「うちゅう」、そしてルワンダ

サグリ創業者の坪井俊輔氏は1994年、神奈川県生まれ。2014年に横浜国立大学理工学部機械工学・材料系学科に入学しました。NECネクサソリューションズ、社長名鑑、横浜国立大学公式広報、Wikipediaなど複数の媒体で確認できる経歴によれば、坪井氏は大学3年生だった2016年6月に株式会社うちゅうを設立し、宇宙を切り口にした小学生向け教育事業を立ち上げています。NPO法人ETIC.主催の「Makers University」1期生にも採択されたと、リクルート「ガラージュトーク」(2023年5月公開)などのインタビューで紹介されています。

坪井氏のキャリアを決定づけたのが、その2か月後、2016年8月のルワンダ・カンボジア訪問です。リクルート「ガラージュトーク」、DRIVEメディア、日経クロステック(2018年)など複数の取材で、本人が同じ趣旨のエピソードを語っています。ルワンダの小学生に夢を聞くと、日本の子と同じように「宇宙飛行士になりたい」「パイロットになりたい」と答えるものの、授業のあと「本当は別のことをやりたいけれど、中学校へ行かずに親の手伝いをしなければいけない」と打ち明けられた、という体験です。

本当は〇〇になりたいけれど、中学校へ行かずに親の手伝いをしなくてはいけない ── ルワンダの小学生の発言として複数取材で紹介(リクルート「ガラージュトーク」2023年、DRIVEメディアほか)

坪井氏は、子どもたちが「夢」を選べない最大の理由が、現地の農業の生産性の低さにあることに気づきます。日経クロステック「発端はルワンダで見た『子供たちの現実』、サグリを起業し衛星データで農家を支援」(2018年)では、坪井氏が「衛星データが無料で商業利用できるというニュースを見て、これは農業の効率化に使えるのではと考えた」と話していたと紹介されています。教育事業の延長で立ち上がった農業課題へのまなざしが、衛星データを起点にしたディープテック企業の構想につながった、という順序です。

2018年6月、坪井氏は兵庫県丹波市にてサグリ株式会社(設立当時の社名はSAgri株式会社)を設立しました。社名は「Satellite(人工衛星)」「AI(機械学習)」「Grid(区画技術)」の頭文字に由来します(NECネクサソリューションズ、リクルート、社長名鑑など)。坪井氏は同時期に株式会社うちゅうの代表からは退いており、農業領域に経営資源を集中する経営判断を、サグリ創業と同時に行っています。

地方企業の事業承継や老舗のリブランドが「家業に戻る」物語として語られやすいのに対し、サグリの物語は「24歳の創業者が、地方都市に本社を置いて新規創業する」物語です。地方発のスタートアップは、これまで「地方にしか拠点がない」ことが弱みとして語られがちでしたが、サグリの場合は、農業課題を扱う事業のリアリティを取りに行く形で兵庫県丹波市という立地を選んでいます。


2. 「アクタバ」と「デタバ」──衛星×AIで自治体の農地調査を作り直す

サグリの事業の中核は、自治体の農業委員会・地域農業再生協議会向けの農地管理SaaSです。サグリ公式サイト、note公式アカウント、PR TIMESプレスリリース、宙畑(sorabatake)、SMART AGRI、AGRI JOURNAL、TOMORUBA、xTECH(三菱地所)、日本経済新聞などの取材記事から、主要プロダクトを整理すると次のようになります。

  • アクタバ(ACTABA):耕作放棄地パトロール調査支援アプリ。衛星画像とAIで農地1筆ごとの「耕作放棄地率」を判定し、地図上に赤色の濃淡で表示する。判定精度は約9割。全国100以上の自治体で導入・実証されている(サグリ公式、宙畑、日本経済新聞「耕作放棄地の判別、衛星画像とAIで精度9割 サグリ」2021年)。
  • デタバ(DETABA):作付け調査効率化アプリ。営農計画書で申請された作物が申請通りに作付けされているかを衛星データとAIで判定し、「申請と違う可能性が高い農地」だけに現地調査を集中させられる(サグリ公式、AGRI JOURNAL 2022年、日本経済新聞「青森県大鰐町に導入決定」2023年)。
  • ニナタバ:農地の担い手マッチング領域のソリューション(サグリ公式、内閣府宇宙開発利用大賞2024年関連発表)。
  • Sagri(営農アプリ):海外農家向けに最適な施肥・農薬・収穫タイミングを衛星データから推定する営農支援アプリ(NECネクサソリューションズ、ジェトロ2019年・2025年など)。

アクタバを全国で初めて導入したのは、岐阜県下呂市農業委員会です。サグリ公式プレスリリースによれば、下呂市農業委員会はその後、アクタバ活用の取り組みで農林水産大臣賞を受賞したことが報じられています(サグリPR TIMES、農林水産大臣賞受賞関連)。導入は中部にとどまらず、関東初として千葉市農業委員会、中国・四国初として広島県尾道市、関西では神戸市農業委員会など、地域単位で「初導入」が積み上がっています(サグリ公式、TOMORUBA「神戸市農業委員会×サグリ」)。

ここで読み取れるのは、サグリが「全国一斉導入」ではなく、地方自治体の農業委員会ごとに「導入第1号」を取りに行く積み上げ型の営業戦略を取っていることです。耕作放棄地調査は、これまで職員が紙の地図を持って現場まで車で行き、目視で確認するという、地方自治体の負担の大きい業務でした。衛星画像で「赤色が濃い場所だけ見に行く」体験を、自治体の現場ごとに体験してもらう──この導入順序が、社員30名規模のスタートアップが全国100自治体超の導入実績を積み上げる経路として機能しています(サグリ公式、note広報、NewVentureVoice「衛星データで農業DX (デジタル化による業務再設計) 耕作放棄地ゼロへ挑むサグリ株式会社」2025年4月など)。

公式発表の系列で並べると、デタバの全国初導入は青森県大鰐町、関西地方初の試験的導入は2023年に本社所在地の兵庫県丹波市と発表されています(サグリ「関西地方初となる『デタバ』の試験的導入が丹波市で決定」2023年7月、神戸新聞掲載、デジタル行政2023年8月)。地方拠点に本社を置く意義として、本社所在地の自治体にプロダクトを使ってもらえることそのものが、後続の関西地域での営業の説得材料になっている、という構造です。

関西地方初となる「デタバ」の試験的導入が丹波市で決定 ── サグリ株式会社 2023年7月発表(神戸新聞掲載、丹波市発表)


3. 岐阜大学発ベンチャー──CTO・田中貴氏が持ち込んだリモートセンシングの知見

サグリのもう1つの軸が、岐阜大学とのアカデミックな連携です。サグリ公式・PR TIMESプレスリリースによれば、サグリは2022年3月に「岐阜大学発ベンチャー」および「農林水産技術等大学発ベンチャー」に認定されています。

中心人物は、取締役CTO(2024年1月以降はCRO)を務める田中貴氏です。田中氏は岐阜大学応用生物科学部の助教・准教授として、人工衛星やドローンによるリモートセンシング、収量コンバインから得られるデータを対象に、機械学習と統計モデルで農業者の意思決定を支援する研究を行ってきました(researchmap、岐阜大学人工知能研究推進センター)。サグリ公式によれば、田中氏は2021年1月にサグリの取締役CTOに就任、2022年4月に岐阜大学准教授に昇任、2024年1月にCROへと役割を移しています。

2024年1月以降のサグリの経営体制では、後任のCTOに元メルカリ米法人(Mercari USA)シニアエンジニアリングマネージャーの牧野直矢氏が、CFOには世界銀行グループ出身の石坪弘也氏が就任しています(サグリ公式「経営体制変更」2024年1月、BRIDGE「サグリ、メルカリ米法人でエンジニアを務めた牧野直矢氏をCTOに招聘」2024年1月、BRIDGE「世界銀行グループ出身の石坪弘也氏をCFOに招聘」2024年2月)。同時期に、技術アドバイザーとして元メルカリGroup CTOの若狹建氏が就任した発表もあります(サグリPR TIMES、Excite ニュース、2024年5月)。

地方拠点のディープテックスタートアップが、メルカリ米法人や世界銀行グループといった都市・国際舞台の人材を経営チームに取り込めている──このこと自体が、サグリの事業フェーズが「地方発の研究シーズ」から「グローバル展開を前提とした経営体」へと移行していることの傍証として読めます。

地方創業のスタートアップにとって、リモートワーク前提の経営チーム構築は前向きに利用できる選択肢です。サグリは創業地を丹波市に置いたまま、東京・神戸・海外を含む分散型の組織として運営されていることが、サグリ公式noteやリモートビズタイムズの取材記事で繰り返し紹介されています。


4. インド・カンボジア・アフリカ──地方発のディープテックが「グローバルサウス」に向かう理由

サグリの海外展開は、創業翌年からすでに始まっています。

ジェトロ「SAgri株式会社:インド進出の決め手は巨大市場とその課題の大きさ」(2019年)とBRIDGE「衛星データ解析で農業を革新するサグリ、グローバルサウスでの展開を加速」(2024年10月)によれば、サグリは2019年9月、インド・ベンガルール(バンガロール)にインド子会社SAGRI BENGALURU PRIVATE LIMITEDを設立しました。Inc42(インド)、Tracxnなど現地メディアにも、サグリのインド法人設立とマイクロファイナンス事業の文脈で取り上げられています。

インドでサグリが取った戦略は、農家への直接販売ではなく、地元の農業金融プレーヤーへのデータ提供です。BRIDGEとPR TIMES「サグリ、インドの農業関連サービス大手LEAFと事業提携を発表」(2024年)によれば、サグリは農家の農地データ解析と所得予測をマイクロファイナンス事業者に提供し、農家の信用力を可視化することで融資を受けやすくする、というモデルを採っています。LEAFとの提携では、農業指導者向けの営農指導情報の展開と、マイクロファイナンスの与信構築を事業化することが発表されました。

東南アジアでは、タイで2020年にJETROの実証事業を通じて水田向けのデジタル情報基盤を構築した実績があります(JICA研修資料2024年7月)。カンボジアでは、2024年11月から、間断灌漑(AWD: Alternate Wetting and Drying)による水田のメタンガス削減を、衛星データで観測・検証する実証事業を開始したことが、ジェトロ「サグリ、カーボンクレジットでカンボジア農家の生計支援へ」(2024年)で報じられています。

アフリカでは、タンザニア・エチオピアなど人口が大きく農業国としての規模を持つ国を中心に、案件単位で実績を積み上げる方針が取られています(BRIDGE「グローバルサウスでの展開を加速」2024年10月、経済産業省「アフリカDX/AfDX」資料、サグリPR TIMES「アフリカ事業」関連)。タンザニアでは凸版印刷(TOPPAN)、OSTiとの連携によるスマート農業実証事業も進められています。

サグリの海外展開を整理すると、「衛星でつくった農地区画データを、現地のマイクロファイナンスや国際機関・自治体ローカルプレーヤーに供給する」という構造で、現地で農家1軒ずつに営業する都市スタートアップ型ではないことが見えてきます。地方発のディープテックが世界へ出ていく時、それは「日本国内で起こした地方発のプロダクトを海外で売る」のではなく、「衛星という同じ地球を見ている技術を使って、現地の既存プレーヤーと組む」形になりやすい──サグリの軌跡は、この型の参考になります。


5. 受賞・資金調達・公的評価──「点」ではなく「列」で並べる

サグリは創業7年目時点(2025年)までに、公的評価・資金調達・受賞を、密に積み上げてきました。本稿で確認できた主な並びは以下のとおりです。

  • 2019年7月 Singularity University主催「Japan Global Impact Challenge 2019」優勝(サグリ公式、宙畑)
  • 2021年2月 横浜国立大学・MUFGなどから1億5500万円の資金調達(横浜国立大学広報、PR TIMES、宙畑)
  • 2021年11月 坪井俊輔氏がMIT Technology Review「Innovators Under 35 Japan」に選出(サグリPR TIMES、MIT Tech Reviewジャパン)
  • 2022年3月 岐阜大学発ベンチャー、農林水産技術等大学発ベンチャー認定(サグリPR TIMES、サグリ公式)
  • 2022年8月 Forbes JAPAN「30 Under 30 Japan / Asia」社会的インパクト部門選出(サグリPR TIMES、Wikipedia)
  • 2023年4月 経済産業省「J-Startup 2023」選定(経済産業省、サグリ公式)
  • 2023年10月 経済産業省「J-Startup Impact」選定(経済産業省、JAcom、Sustainable Japan)
  • 2024年2月 内閣府「第6回宇宙開発利用大賞 内閣総理大臣賞」受賞 — 受賞テーマ「衛星データを活用した土壌分析技術及び農地区画化技術」(内閣府、SPACE Media、サグリ公式)
  • 2024年8月 シリーズAラウンドで約10億円の資金調達。事業会社としてキヤノンマーケティングジャパン、キリンホールディングス、島津製作所、ヤマト運輸などが参加(サグリPR TIMES、日本経済新聞「衛星情報で農業支援のサグリ、10億円調達 海外人員倍に」2024年8月、宙畑、UchuBiz、BRIDGE)
  • 2024年12月 日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2025年版】」に選出(サグリ公式)
  • 2024年12月 在日フランス商工会議所「Business Leaders Forum MEET & CONNECT 2024」のピッチイベントで「BEST JAPANESE STARTUP FOR THE FRENCH/EUROPEAN MARKET CONTRIBUTING TO LOW CARBON TRANSITION」選出(サグリ公式)

この並びでとくに重みがあるのは、2024年2月の「宇宙開発利用大賞 内閣総理大臣賞」と、2024年8月のシリーズA約10億円調達がほぼ同年内に並んでいることです。前者は技術と社会実装の評価、後者は事業としての評価で、2つを同年に獲ったことで、サグリは「研究シーズ寄りのディープテック」から「グローバルに伸ばすアグリテック」へ位置づけを切り替えています。日本経済新聞の取材タイトル「海外人員倍に」が示すとおり、シリーズA以降の主要KPI (重要業績評価指標)は海外組織体制の構築にシフトしている、と公式発表からも読めます。

地方発の新規創業ディープテックが、公的評価をマイルストーンとして使う作法は、能作(富山)や中川政七商店(奈良)のような老舗のメディア露出獲得とは少し性質が違います。サグリにとって受賞と公的選定は、「自治体に営業するときの信頼の前提」と「海外で現地パートナーと組むときの実績の前提」を同時に作る装置として機能している、と整理できます。


6. 編集視点:地方拠点ディープテックの作法

サグリの事例から取り出せる学びを、ローカルグローススタジオ的に整理すると次のようになります。

  1. 地方拠点は、事業のリアリティを取りに行くための立地として選ぶ サグリが本社を兵庫県丹波市に置いているのは、農業課題を扱う事業の「現場の近さ」を取りに行ったうえでの選択です。地方拠点の創業は、コストが安いから選ぶのではなく、扱う事業課題の現場に最も近いから選ぶ、という発想に組み替えると、立地そのものが事業の信頼性に変わります。

  2. 大学発ベンチャーは「地名+大学名」の二重ルートで信頼を作れる サグリは「兵庫県丹波市発」「岐阜大学発ベンチャー」の両方の文脈で公的認定を受けています。地方拠点のスタートアップにとって、立地の自治体・経済産業局と、研究シーズの源泉となった大学の双方からの「お墨付き」は、営業先の自治体や海外パートナーに対する説明をシンプルにします。

  3. 自治体ごとの「初導入」を積み上げるGTM (Go-To-Market戦略・市場展開の進め方) が、地方発SaaSに効く アクタバは、岐阜県下呂市の全国初導入を皮切りに、関東初の千葉市、中国・四国初の尾道市、関西の神戸市と「地域単位の初導入」を積み上げて100自治体超の実績に到達しました。地方自治体向けSaaSは、全国一律のマーケティング投資より、地域単位の事例化を連続で積む方が遠くまで届く参考事例として読めます。

  4. 海外展開は「現地の既存プレーヤーへのデータ供給」で組む サグリのインド展開は、農家への直販ではなく、マイクロファイナンス事業者LEAFや農業金融プレーヤーへのデータ供給です。地方発ディープテックが海外で実装される時、自社で営業組織を持つより、現地で農家とすでに接点を持つ事業者へAPI・データを差し込むモデルの方が、人員投下のスケール効率が高いという参考になります。

  5. 受賞と資金調達は「列」で並べてマイルストーンにする 宇宙開発利用大賞・J-Startup・J-Startup Impact・Forbes 30 Under 30・MIT Tech Reviewといった受賞群と、シリーズA調達・複数の事業会社からの出資という資金調達の系列が、ほぼ同じ時期に並ぶことで、サグリの「次の数年」を投資家・取引先・自治体に説明する素材になっています。地方拠点の新規創業企業にとって、単発の受賞はノイズですが、列に並べたときは経営史になります。


本事例から見える経営とマーケティングの学び

サグリの物語は、地方拠点に本社を置く新規創業のディープテックが、衛星データという「地球を一様に見ている技術」を使って、国内自治体の農地調査と、インド・東南アジア・アフリカのカーボンクレジット事業に同時に踏み込んだ事例として読めます。重要なのは、坪井俊輔氏が大学3年生で立ち上げた教育事業を経て、ルワンダで「子どもたちが夢を語れない現実」に触れた経験を、農業の生産性向上というディープテックの事業領域に翻訳したことです。地方発の新規創業は、ブランドやリソースが潤沢でない状態から成長を作る点で、老舗の世代交代やリブランドと共通する課題を抱えています。地方拠点に本社を置きながら、衛星データという地球規模のレイヤーを使ってグローバルに展開する──サグリの歩みは、地方企業の経営者が「自社の事業のリアリティを取りに行く立地」と「世界で再現可能な技術レイヤー」を組み合わせて成長を作るための参考になります。


関連:ローカルグローススタジオ・グロースマガジン

本事例の学びと共通する、グロースマガジン(https://lgstudio.jp/magazine/)の解説記事を2本紹介します。

1. 地方経営者、地方人材向け:スタートアップとは何か?

共通点: サグリは丹波という地方拠点に本社を置きながら、シリーズA調達・J-Startup・MIT Tech Review選出と、まさに本記事が定義するスタートアップ的な急成長の軌跡をたどっています。地方経営者が「スタートアップとは何か」を理解する際の、地方拠点×ディープテックという具体例として、サグリは本記事の補強事例になります。

2. 新サービス開始時のステップをおさらい:受け皿整備→ストック的→フロー的

共通点: サグリは衛星データを処理するAIエンジンという「受け皿」を整え、自治体向けのアクタバ・デタバ・ニナタバというストック的なSaaS群を展開し、その上でインド・東南アジア・アフリカへとフロー的に拡張しました。本記事の「受け皿→ストック→フロー」の順序が、ディープテックの海外展開設計にどう適用されるかの実装例として読めます。


出典


※本稿は2026年5月18日時点の公開取材記事と公式発表を基に構成しています。固有名詞・数値は引用元の表記に従いました。サグリ株式会社の本社所在地は兵庫県丹波市氷上町であり、隣接する丹波篠山市との混同を避けるため、本稿では丹波市と表記しました。記載に誤りがあった場合は、お問い合わせフォームよりご指摘ください。

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