グローススタジオレポート

地方企業の成長事例

160年の老舗かまぼこが「箱根駅伝」と「かまぼこの里」で築いた地方ファンマーケティング

1865年創業の老舗かまぼこメーカーが「かまぼこの里」と「箱根駅伝」を核にしたファン体験設計と、再生可能エネルギー・脱炭素経営を組み合わせ、小田原という創業地そのものをブランドへ編み直した地方老舗企業の成長事例

企業概要(公開情報)

企業名
株式会社鈴廣蒲鉾本店
所在地
神奈川県小田原市
代表者
鈴木博晶(代表取締役会長・10代目)/鈴木智博(代表取締役社長・11代目、2025年9月就任)/鈴木悌介(取締役相談役・小田原箱根商工会議所会頭)
設立
1865年
業種
かまぼこ製造業/レストラン/観光
従業員数
グループ連結653名(2025年8月時点)
本記事の公開情報
2026-05-18 公開 / 出典 16本 / 本文約5,500字

今回取り上げるのは、神奈川県小田原市風祭で1865年(慶応元年)に創業した老舗かまぼこメーカー、株式会社鈴廣蒲鉾本店(以下、鈴廣)です。鈴廣グループは、ホールディングス的な機能を担う株式会社鈴廣蒲鉾本店を中心に、製造を担う鈴廣かまぼこ株式会社、業務用卸のスズヒロシーフーズ株式会社、原材料の海外調達を担うインターシーズ株式会社などで構成されています。2025年8月時点でグループ連結売上高104億9000万円、従業員数653名という規模に達しています(鈴廣かまぼこ公式「会社概要」、中小企業基盤整備機構「成長企業100億事例」資料)。

本稿は、次の公開取材記事と公式発表をもとに、以下3点を整理します。

  • テレビ東京「カンブリア宮殿」
  • 日経新聞
  • 神奈川新聞(カナロコ)
  • 東京新聞
  • 東洋経済オンライン
  • グリーンズ
  • PR TIMES
  • エヌエヌ生命保険「家業承継インタビュー」
  • マガジン9
  • 日本商工会議所「日商Assist Biz」
  • Telescope Magazine
  • 鈴廣かまぼこ公式サイト
  • SDGs ACT
  • サティスファクトリー「サスティナブル
  • プラクティス」
  1. 創業からの歴史と「老舗にあって、老舗にあらず」という社是
  2. 「かまぼこの里」と「箱根駅伝」を一体運営するファン体験の作り方
  3. 副社長・鈴木悌介氏が始めた「エネ経会議」と、創業160年目の社長交代

1. 「老舗にあって、老舗にあらず」──160年の歩みを支える社是

鈴廣の歴史は、1865年(慶応元年)にさかのぼります。鈴廣かまぼこ「沿革」によれば、当時、四代目村田屋鈴木権右衛門が、小田原代官町で網元漁商を営むかたわら、副業として蒲鉾製造を始めました。江戸時代の小田原宿は東海道五十三次の宿場町として栄え、参勤交代の大名や箱根温泉を訪れる客の食膳に蒲鉾が並ぶようになっていた時期にあたります。

1887年(明治20年)頃、六代鈴木廣吉が千度小路(現在の小田原市本町)に店を移転し、蒲鉾製造を本業として独立。屋号を「鈴廣(すずひろ)」と定めました(鈴廣かまぼこ「沿革」)。「鈴廣」という屋号は六代の名前「鈴木廣吉」に由来しています。

戦後の1951年(昭和26年)3月に「株式会社鈴廣蒲鉾店」と改称し、個人経営から会社組織への改組を実施しました。1989年(平成元年)には現在の本拠地である小田原市風祭に工場を建設し、「鈴廣蒲鉾工業株式会社」へと改称しました。同時に直売店として姉妹会社「鈴廣商事株式会社」を設立しています(鈴廣かまぼこ「沿革」、Weblio辞書「鈴廣」)。

鈴廣の経営の柱として繰り返し取材で語られてきたのが、社是「老舗にあって、老舗にあらず」です。鈴廣かまぼこ「社是・企業理念」やハーバービジネスオンラインの取材(2018年)によれば、これは現代表取締役会長・鈴木博晶氏が若い頃に祖父から受け取った言葉で、次の2つの決意を1つにまとめたものです。

老舗にあって──どんな時代になっても、決して変えてはならないものは頑固に守る。商売に対する姿勢、お客様と正対する仕事ぶり、正直で誠実であること。 老舗にあらず──変えなければならないものは、勇気をもって変える。仕事のやり方は、現状に満足せず、よりよいものへと絶えず作り直す。 ── 鈴廣かまぼこ「社是・企業理念」公式ページ

この「変えない/変える」を二段重ねにする発想は、後述の「かまぼこの里」開発、超特選蒲鉾「古今」のような高級品開発、本社ビルのZEB化、脱炭素・再生可能エネルギーへの転換まで、鈴廣のあらゆる経営判断の背骨になっています。地方の老舗企業にとって、社是は壁に貼る言葉ではなく、後継世代が意思決定するときの判断軸として機能している例として読めます。


2. 「かまぼこの里」──工場併設の地方観光施設という発想

鈴廣の事業構造でもっとも特徴的なのが、本社・工場と一体で運営している複合観光施設「鈴廣かまぼこの里」です。鈴廣かまぼこ「会社概要」や小田原市地場産業振興協議会の店舗紹介、トラベルjp、たびらい観光情報などによれば、現在の鈴廣かまぼこの里は、箱根登山線「風祭駅」直結の立地に、次のような施設が一体で集積しています。

  • 鈴廣蒲鉾本店/鈴なり市場:約200種類のかまぼこ・練り物と小田原・箱根の土産を扱う直営販売店
  • 鈴廣かまぼこ博物館:かまぼこの歴史・原理・職人技を学べる入館無料の博物館。窓越しの工場見学スペースも併設
  • かまぼこ・ちくわ手づくり体験教室:すり身から自分でかまぼこを成形・蒸し上げる体験プログラム
  • ビュッフェレストラン「えれんなごっそ」:地元・小田原箱根の食材を使った約50品の月替わりビュッフェ(2009年6月開業)
  • CAFE107:引退した箱根登山鉄道の車両を活用したカフェ
  • 箱根ビール直営店:自家醸造のクラフトビール販売

テレビ東京「カンブリア宮殿」2018年4月26日放送回(「創業150年 蒲鉾の価値を次世代に!」)では、かまぼこの里の年間来場者数が約100万人規模に達することが報じられています。同回ではあわせて、過去40年で蒲鉾業界全体の生産量が5分の1にまで縮小する中、鈴廣は売上を5倍に伸ばしてきたことも紹介されました。業界全体が縮小する中で、特定の老舗が来場と販売を集約させる──これは、能作(富山)の新本社や中川政七商店の鹿猿狐ビルヂングと並べて読める、地方老舗企業の典型的な勝ち筋の1つです。

鈴廣の場合、特に重要なのは、「販売店」と「工場」と「博物館」と「レストラン」を、別々の建物・別々のチームではなく、同じ拠点に編成している点です。窓越しに工場の職人を見ながら、博物館でかまぼこの歴史を学び、手づくり体験で自分で成形し、直営店で買って、ビュッフェで食べる──という一連の流れが、1日のうちに完結する設計になっています。日経クロストレンドやFOODIEの取材で、鈴廣が「1本4000円超の超特選蒲鉾『古今』」のような高単価商品を成立させられている背景には、こうした体験との接続があると言ってよいでしょう。

蒲鉾の最高級原料魚であるグチに希少なオキギスをほどよくとり合わせ、板つけ、蒸し上げまで、すべて職人の手づくりで仕上げます ── 鈴廣かまぼこ公式「超特選蒲鉾 古今」商品ページ

「古今」は2016年度全国蒲鉾品評会で最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞しています(鈴廣かまぼこ採用note)。職人技を博物館で見せ、その技術の極北として「古今」を売る──という、体験と商品の縦のつながりが、鈴廣のファンマーケティングの基本形になっています。


3. 箱根駅伝・小田原中継所──60年近く沿道に立ち続ける老舗の流儀

鈴廣のファン体験設計のもう1つの柱が、毎年正月の「東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)」です。神奈川新聞(カナロコ)の取材(2024年第100回大会記念記事)やスポーツメディアMELOS(2021年)、小田原箱根経済新聞などによれば、鈴廣かまぼこ本店の敷地内に箱根駅伝の小田原中継所が置かれたのは1967年の第43回大会から。2025年の第101回大会まで約60年にわたって、鈴廣の敷地が往路4区→5区、復路6区→7区の襷の受け渡し地点として使われ続けています。

カナロコの取材によれば、鈴廣では大会当日に往路と復路の1位通過選手の足形を取り、創業以来約30年分が社内で保管されているとのことです。スポーツメディアMELOSの記事には、鈴廣のスタッフの多くが小田原出身で、「子どもの頃は家族と沿道で応援し、いまは中継所で働きながら応援している」という地元と職場の重なりが紹介されています。

大会当日の鈴廣前では、沿道に集まる箱根駅伝ファンへ日本酒と紅白のかまぼこの振る舞いが行なわれています ── MELOS「小田原中継所の鈴廣蒲鉾、出場校の常宿の女将に聞きました」

毎年約1000人の沿道客に対し、約800食のかまぼこと振る舞い酒を提供する規模感です。鈴廣のマーケティングチーム企画開発部はこれを「観戦される方と一緒に箱根駅伝を応援できることが光栄」と語っており、自社の販促というより、地域行事の運営者としての姿勢が公開取材から一貫して読み取れます。

箱根駅伝は、正月の地上波生中継で2日間にわたり高視聴率を稼ぐ国民的イベントです。中継所として鈴廣の社名と本店が必ず映る、というメディア露出は、広告予算では再現不可能な水準のブランド資産になっています。重要なのは、鈴廣がこれを「広告枠」として扱っていないことです。第101回・第102回大会の小田原中継所対応も、鈴廣のイベント情報ページで応援イベント・交通案内・周辺マップなど運営側の情報として丁寧に発信されています(鈴廣かまぼこ「箱根駅伝 小田原中継所の対応について」)。

加えて、鈴廣はかまぼこの里で大会当日に応援イベントを開催し、北條太鼓・鈴廣太鼓の演奏、振る舞い酒、紅白かまぼこの無料配布まで自社で実施しています(小田原箱根経済新聞、湘南人2024年取材)。これも、来場者を販売店に呼び込む装置というより、地域行事を成立させる側に回るというスタンスとして整理できます。


4. 副社長・鈴木悌介氏──エネ経会議と「経済をエネルギーから考える」経営

鈴廣の経営を語るうえで欠かせないもう1人の人物が、現在の取締役相談役・鈴木悌介氏です。日経新聞「仕事人秘録」連載(2018年)、東洋経済オンライン(2022年)、グリーンズ(2016年)、マガジン9インタビュー、エネ経会議公式ブログなどによれば、鈴木悌介氏は1955年小田原市生まれ、上智大学経済学部を卒業後、1981年に渡米。米国ロサンゼルスでかまぼこ普及事業に従事し、1991年までの約10年間、現地で経営を担いました。

1987年に父と祖父が相次いで急死したことを契機に、米国事業に区切りをつけ、家業を支えるために帰国(日経新聞「仕事人秘録」第4回)。その後、鈴廣の経営に深く関わり、最終的に代表取締役副社長を経て、2025年9月以降は取締役相談役、ならびに小田原箱根商工会議所の会頭(2017年初当選、2023年に4期目)として地域経済を担う立場へとシフトしています(日商Assist Biz「リーダーの横顔」、タウンニュース小田原版2022年取材)。

鈴木悌介氏の名前を全国区にしたのは、2012年3月に発足させた「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)」です。東日本大震災と原発事故から1年後の発足で、発足時には全国の中小企業経営者300人以上が参加(オルタナ2012年取材)。2013年に一般社団法人化、現在は全国400社近い経営者が参加するネットワークとなり、鈴木悌介氏が代表理事を務めています(エネ経会議公式ブログ、東京新聞2021年、東洋経済オンライン2022年)。

エネ経会議の旗印は、グリーンズや東洋経済オンラインの取材によれば、次の2点に整理されます。

  1. 地域で再生可能エネルギーの地産地消の仕組みをつくる
  2. 省エネを企業経営の中心テーマに据える

鈴廣自身が、その経営判断のレベルで動いています。マガジン9のインタビューによれば、鈴廣はグループ5社の電力を地元の再生可能エネルギー利用の新電力に切り替え、本社ビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)水準に建て替え、ショップ・レストラン・工場に太陽光発電を導入してきました。SDGs ACTやサティスファクトリー「サスティナブル・プラクティス」、神奈川県の感謝状贈呈に関するプレスリリース(2024年)、Yahoo!サストモなどの取材では、それに加えて次のような取り組みが整理されています。

  • 1999年(平成11年)から県と協働し「森林再生パートナー」として水源林の保全活動に参加
  • 「かながわプラごみゼロ宣言」への賛同と海洋プラスチック対策
  • 小田原産・相模湾産の魚を優先的に使う地産地消の原料調達
  • 鈴廣の女将による「小田原の海と魚を見守る」発信(Yahoo!サストモ取材)

鈴木悌介氏は東京新聞のインタビューで、再エネ・省エネを「電力会社の話」ではなく「経営者の戦略」として位置づける必要性を語っています。鈴廣の場合、この姿勢が単なる広報メッセージにとどまらず、「本社ビルそのものをZEBにする」という物理的な投資にまで落ちている点が、地方の老舗企業のESGとして大きな差分です。


5. 創業160年・29年ぶりの社長交代──10代目鈴木博晶氏から11代目鈴木智博氏へ

2025年9月8日、鈴廣は29年ぶりの社長交代を発表しました(鈴廣かまぼこ株式会社プレスリリース2025年9月、神奈川新聞「鈴廣かまぼこ、29年ぶりに社長交代」、日本経済新聞2025年9月「鈴廣、29年ぶり社長交代 長男の智博氏」、みなと新聞、タウンニュース小田原など)。

  • 10代目代表取締役社長・鈴木博晶氏 → 代表取締役会長へ
  • 11代目代表取締役社長へ、長男の鈴木智博氏が就任
  • 代表取締役会長を務めていた鈴木智恵子氏は新設の名誉顧問へ

報道各社の見出しは「創業160年の節目に若返り図る」(神奈川新聞)といったトーンで、創業160周年と次世代への代替わりが意図的に重ねられていることがわかります。

新社長の鈴木智博氏は1989年生まれ、青山学院大学を2014年に卒業後、商社の阪和興業に入社し水産分野で経験を積んだうえで、2015年に鈴廣に入社(エヌエヌ生命保険「家業承継インタビュー」2021年、note「魚肉たんぱく同盟」鈴木智博氏ストーリー、メルセデス・ベンツ「Meets Japan」連載2018年)。入社後はマーケティング部門を経験し、企画チーム常務取締役 本部長を経て社長に就任しています。社内では「11代目見習い」として、SNSを含めて自身の名前と顔を発信してきたことでも知られます(エヌエヌ生命保険「家業承継」連載)。

四世代家族の食卓に、家族Lineに ──「唯一無二のかまぼこ屋」への愛が溢れる ── エヌエヌ生命保険「家業承継インタビュー」鈴木智博氏/鈴木結美子氏

注目しておきたいのは、10代目(鈴木博晶氏)が会長として残り、9代目相当に位置する鈴木智恵子氏が名誉顧問として新設ポジションに就いた点です。これは、創業家の意思決定権を急に集中させない設計とも読めます。中川政七商店が13代目から創業家外(千石あや氏)へと経営を渡したのに対し、鈴廣はあくまで創業家内での代替わりですが、世代間の役割分担を肩書として明示している点で、地方老舗企業の事業承継の1つの作法を示しています。

加えて、副会長・副社長として長年経営を支えた鈴木悌介氏が、2025年9月以降は取締役相談役として位置づけられ、小田原箱根商工会議所の会頭という地域経済プラットフォームの仕事に軸足を移していることも、この代替わりのセットで読むべき要素です。鈴廣単体の経営は次世代に渡し、創業家の上の世代は「地域経済・脱炭素・産業ネットワーク」というメタな仕事に専念する──という分業のかたちが整いつつあります。


6. 編集視点:老舗ファンマーケティングと「地域ごとつくる」経営の作法

鈴廣の事例から取り出せる学びを、ローカルグローススタジオ的に整理すると次のようになります。

  1. 「観光地に出る」ではなく「観光地を作る」
    鈴廣かまぼこの里は、既存の観光地に出店する旗艦店ではなく、本社・工場・販売店・博物館・レストラン・体験教室を1つの拠点に編成し直すことで、風祭駅自体を目的地化した施設です。地方の老舗企業にとって、最大のマーケティング投資は、すでに持っている拠点を観光と街区の文脈に編み直すことです。

  2. 広告ではなく「行事」に投資する
    箱根駅伝の小田原中継所として60年近く沿道に立ち、毎年1000人規模に振る舞い酒と紅白かまぼこを無料配布する。これは販促ではなく、地域行事を成立させる側に回る、という選択です。同じ予算を広告に投じても、創業160年の老舗ブランドはここまで蓄積しません。

  3. 体験と高級品を縦に並べる
    博物館・手づくり体験で職人技を見せ、その技術の極北として1本4000円超の「古今」を売る。鈴廣のファンマーケティングは、入口の体験と出口の高級品が縦に並んでいて、それぞれが互いの裏付けになっています。地方の老舗企業がEC・直販を伸ばす際の、わかりやすい設計の参考例です。

  4. エネルギーと脱炭素を「経営戦略」に持ち上げる
    鈴木悌介氏が率いるエネ経会議は、再エネ・省エネを「電力会社の話」ではなく「中小企業の経営戦略」に位置づけました。鈴廣自身も本社ビルをZEBに建て替えるところまで踏み込んでいます。地方の老舗企業の脱炭素は、CSRレポートで完結させるか、経営の数字に組み込むかで、説得力が大きく変わります。

  5. 代替わりは創業家内でも「役割」を分けて設計する
    2025年9月の代替わりは、10代目(会長)/11代目(社長)/鈴木悌介氏(相談役+商工会議所会頭)/鈴木智恵子氏(名誉顧問)というように、世代間の役割を肩書として明示しました。同じ家系内であっても、誰が単体経営を担い、誰が地域プラットフォームを担うかを書き分ける──というのは、創業家以外への承継だけでなく、創業家内承継においても再現可能な作法です。


本事例から見える経営とマーケティングの学び

鈴廣の物語は、「老舗ブランド」と「地方都市」と「業界の縮小」という3つの宿題を、ファン体験設計と地域行事への参与、そして脱炭素経営という3つの打ち手でまとめて引き受けた事例として読めます。重要なのは、鈴廣が広告予算で勝負する道を選ばず、「かまぼこの里」「箱根駅伝小田原中継所」「エネ経会議」「ZEB本社」という、それぞれが投資の桁が大きい打ち手を、創業160年かけて積み上げてきたことです。地方の老舗企業の成長は、新しい施策の数ではなく、世代をまたいで積み上げる時間軸の長さで決まるという読み方ができます。ブランドやリソースが薄い状態から成長を作る経営者にとって、鈴廣の歩みは「何を続け、何を変えるか」を考えるための学びになります。


関連:ローカルグローススタジオ・グロースマガジン

本事例の学びと共通する、グロースマガジン(https://lgstudio.jp/magazine/)の解説記事を2本紹介します。

1. 顧客獲得コストを下げるには「ストック>フロー」を意識しよう

共通点: 鈴廣の「かまぼこの里」と「箱根駅伝の小田原中継所」は、まさにストック型資産の典型です。本記事では、新規顧客を毎月買い直すフロー型施策ではなく、長期的に効き続けるストック型投資を増やすことで顧客獲得コストが下がる、という考え方が整理されています。鈴廣が60年にわたって箱根駅伝の沿道に立ち続け、観光・体験・直販・レストランを1つの拠点に編成し続けてきた動き方は、本記事の「ストック>フロー」を160年単位で実装した形と読めます。

2. 地方企業/スタートアップに共通する、低リソース・ブランド無しの戦わない戦略

共通点: 鈴廣は、大量生産の練り物メーカーや量販店PBと真正面から競うのではなく、「小田原という地域 × 職人技 × 体験」という戦場をつくり直すことで、業界全体が5分の1まで縮む中で売上を5倍に伸ばしました。本記事が示す「ブランドや広告予算で殴り合わずに、自社が勝てる土俵を設計する戦わない戦略」は、鈴廣の「かまぼこの里」と「超特選古今」を縦に並べる打ち手と直接対応します。


出典

  • 鈴廣かまぼこ 公式サイト「会社概要」「沿革」「社是・企業理念」「超特選蒲鉾 古今」「箱根駅伝 小田原中継所の対応について」「2021年箱根駅伝のお知らせと、駅伝の味」(株式会社鈴廣蒲鉾本店、取得日2026-05-18)
    https://www.kamaboko.com/corporate/outline/
    https://www.kamaboko.com/corporate/history/
    https://www.kamaboko.com/corporate/policy.html
    https://www.kamaboko.com/shohin/kokon/
    https://kamaboko.com/events/hakone_ekiden/
    https://www.kamaboko.com/column/23936/

  • 鈴廣かまぼこ株式会社 プレスリリース「鈴廣かまぼこ株式会社 社長交代のお知らせ」(株式会社鈴廣蒲鉾本店、2025年9月公開、取得日2026-05-18)
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000135819.html

  • 神奈川新聞 カナロコ「鈴廣かまぼこ、29年ぶりに社長交代 創業160年の節目に若返り図る」(株式会社神奈川新聞社、2025年9月公開、取得日2026-05-18)
    https://www.kanaloco.jp/news/economy/article-1205439.html

  • 神奈川新聞 カナロコ「小田原中継所が置かれる『鈴廣かまぼこ』 1位通過選手『足形』作り30年 箱根駅伝 100回目の襷」(株式会社神奈川新聞社、2024年公開、取得日2026-05-18)
    https://www.kanaloco.jp/news/life/article-1045803.html

  • テレビ東京「カンブリア宮殿」2018年4月26日放送「鈴廣かまぼこ 創業150年 蒲鉾の価値を次世代に!職人技を武器に勝つ 老舗店の格闘記」鈴廣かまぼこ社長 鈴木博晶氏(株式会社テレビ東京、取得日2026-05-18)
    https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2018/0426/

  • 日本経済新聞「仕事人秘録 鈴廣かまぼこ副社長、鈴木悌介氏(4) 父と祖父が相次ぎ急死 米事業売却し『鈴廣』支える」(株式会社日本経済新聞社、2018年4月公開、取得日2026-05-18)
    https://www.nikkei.com/article/DGXKZO29375500T10C18A4XXA000/

  • 東洋経済オンライン「鈴廣かまぼこグループ副社長・鈴木悌介 脱原発を提唱する経済人 自然エネルギーに懸ける」(株式会社東洋経済新報社、2022年公開、取得日2026-05-18)
    https://toyokeizai.net/articles/-/563061

  • 東洋経済オンライン「『鈴廣かまぼこ』150年も生き残る老舗の本質」(株式会社東洋経済新報社、取得日2026-05-18)
    https://toyokeizai.net/articles/-/212445

  • グリーンズ「『鈴廣かまぼこ』副社長・鈴木悌介さんが始めた経営者たちのエネルギー改革」(NPO法人グリーンズ、2016年12月公開、取得日2026-05-18)
    https://greenz.jp/2016/12/21/suzuhiro_enekeikaigi/

  • マガジン9「小田原発!『エネ経会議』経済もエネルギーも、中央集権型システムからの転換が求められています」鈴木悌介氏インタビュー(マガジン9、取得日2026-05-18)
    https://www.magazine9.jp/interv/suzuhiro/

  • 東京新聞「東日本大震災から10年 つながるつなげる 『エネ経会議』鈴木悌介さん 地産地消エネ、小田原から訴える」(株式会社中日新聞東京本社、2021年公開、取得日2026-05-18)
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/85303

  • エヌエヌ生命保険「家業承継インタビュー 四世代家族の食卓に、家族Lineに『唯一無二のかまぼこ屋』への愛が溢れる 株式会社鈴廣蒲鉾本店 企画チーム常務取締役 本部長 鈴木智博氏/型染め作家 鈴木結美子氏」(エヌエヌ生命保険株式会社、2021年7月公開、取得日2026-05-18)
    https://www.nnlife.co.jp/pedia/succession/suzuhirokamaboko_20210728

  • 日本商工会議所「日商Assist Biz リーダーの横顔 地域に根差し より良いまちへ襷をつなぐ 鈴木悌介会頭 神奈川県 小田原箱根商工会議所」(日本商工会議所、取得日2026-05-18)
    https://ab.jcci.or.jp/article/105626/

  • スポーツメディア MELOS「地元が見守ってきた箱根駅伝とは。小田原中継所の鈴廣蒲鉾、出場校が愛用する常宿の女将に聞きました」(株式会社ワン・パブリッシング、取得日2026-05-18)
    https://melos.media/special/35805/

  • 小田原箱根経済新聞「小田原鈴廣『かまぼこの里』で箱根駅伝の応援イベント」(みんなの経済新聞ネットワーク、取得日2026-05-18)
    https://odawara-hakone.keizai.biz/headline/323/

  • ハーバービジネスオンライン「社是は『老舗にあって老舗にあらず』。小田原の老舗『鈴廣かまぼこ』が、太陽光発電や森林整備をする理由」(株式会社扶桑社、取得日2026-05-18)
    https://hbol.jp/173680/

  • Yahoo!サストモ「ダムと高速道路が海を変えた? 小田原の海と魚を見守ってきた老舗かまぼこ店の女将の言葉」(LINEヤフー株式会社、取得日2026-05-18)
    https://sdgs.yahoo.co.jp/originals/40.html

  • SDGs ACT「SDGs取組事例 鈴廣かまぼこ株式会社」(一般社団法人SDGs支援機構、取得日2026-05-18)
    https://www.sdgs-act.jp/social-act/kamaboko2/

  • サティスファクトリー「サスティナブル・プラクティス Vol.1 株式会社鈴廣蒲鉾本店」(株式会社サティスファクトリー、取得日2026-05-18)
    https://www.sfinter.com/information/post-525/

  • エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)公式ブログ・代表理事 鈴木悌介プロフィール(一般社団法人エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議、取得日2026-05-18)
    https://enekei.jp/official_blog/


※本稿は2026年5月18日時点の公開取材記事と公式発表を基に構成しています。固有名詞・数値は引用元の表記に従いました。代表者の代数や役職表記は、2025年9月の社長交代発表(鈴廣かまぼこ株式会社プレスリリース)に基づいています。記載に誤りがあった場合は、お問い合わせフォームよりご指摘ください。

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